#1007
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「辛い心」を乗り越える <独占インタビュー> 池江璃花子「何があっても」

2020/07/16
絶望の淵をさまよった池江璃花子に笑顔があふれた。
白血病との闘い、その末の退院から7カ月――。「泳ぎ続ける」と覚悟を決めた天才スイマーは、パワフルになり、とびきりの笑顔で戻ってきた。いかにして、そのメンタルを立て直したのか。絶望の淵をさまよった彼女の言葉に耳を傾けた。

 窓から注ぐ自然光がプールに反射している。水面がキラキラと輝いている。

 6月下旬、都内にある日本大学水泳部のプールに池江璃花子を訪ねた。

「おはようございます!」

 梅雨の合間の太陽に目を細めながらやってきた彼女は、こちらを見つけると、張りのある声で挨拶をしてくれた。

 色の白さは際立っている。腕、脚は細い。それでいて何よりも視線を引き寄せるのは、まぶしい笑顔だ。

 アップ用のカラフルな水着を身にまとってロッカールームから出てきた池江は、入念なストレッチで体をほぐした後、まずはチームメイトたちとエアロバイクで軽めのインターバルトレーニングを行なった。

「サドルが低いから上げたら?」

 池江が仲間のサドルの調節を手伝う。以前と変わらず、リーダー的な存在のようだ。

 エアロバイクが終わると、いよいよプールでのウォーミングアップが始まった。ところが、軽快なストロークで水面をかき分けているのが見えたのも束の間、池江は他の選手より早めにアップを切り上げた。そして、何やら意味ありげな笑みを浮かべた。

 この日の中心メニューはタイム測定だった。レース用の水着に着替えて再びやってきた池江は、プールの片隅に1人で座って集中力を高めている。スタッフに尋ねると、やけに短いアップは、調子が良いときの池江特有のルーティンだという。

先入観を打ち砕くレベルの泳ぎ。

“意味ありげな笑み”の正体は何だろうと想像を巡らせていると、タイム測定が始まった。目の前に、まったく別人の顔になった池江がいた。

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photograph by Shin Suzuki

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