「ああ、彼と私は同じ立場にありながら、逆の世界を見ていたんだ」
彼とはこの本の主人公、トーマス。30歳の時に治療を経て、男性となったトランスジェンダーだ。男性の初心者として生きていくなかで、自身に期待される男らしさに対して彼は居心地の悪さを感じていた。
一方、私、下山田志帆は自分のセクシャリティを表す言葉を持ち合わせていない。ただカッコいい服装が好きで、彼女がいて、泣き虫で。社会の求める女らしさが全くしっくりこなかった。男らしさを探るためにボクシングを始めた彼。女らしさから逃げるためサッカーを始めた私。私と彼をそれぞれ苦しめていたのは逆の世界だったようだ。
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photograph by Sports Graphic Number