#988
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<GORO's EYES 五郎丸解説> 日本×スコットランド「ティア1に通じる強さの証明」

2019/10/18
前半17分、左横から切り込んだ福岡。タックルを受けて倒れ込みながらも、オフロードで松島へボールをつなぎ、直後のトライをアシストした。
4年前、日本代表の前に立ちはだかった因縁の相手との再戦。互いに一歩も引かない80分間の死闘の中に見えた、列強と渡り合う強さの核、次なる舞台に向けた課題とは。(Number988号掲載)

 素晴らしい戦いだった。

 日本とスコットランド、両軍の持ち味がいかんなく発揮され、しかもラスト20分は消耗が進み、精神性までが試される死闘になった。

 この試合で日本はティア1の国と同等の力があることを証明した。強いスコットランド相手に、堂々と逃げ切ったことに僕は驚きを禁じ得なかった。

 このジャパンは懐が深い。

 アタックに関しては、アイルランド戦のようにポゼッションを重視しつつ、予期せぬ状況が起きた時でも、15人全員が対応できる力を持っている。局面における「柔軟性」が4年前とは段違いだ。オールブラックスとまでは言えないが、その域に手が届きそうなほど、個人の判断力が備わってきている。これはジェイミー・ジャパンが3年間取り組んできたことの成果だろう。

 また、この試合はタックルを受けながらパスを出す「オフロード」がトライを演出した。僕は好きなプレーなのだが、前HCのエディー・ジョーンズさんは好まなかった。確実性を保証できないからだ。一方でジェイミー・ジャパンはこのスキルの習得に積極的に取り組み、この戦いで一気に花を開かせた。ひとつ目のトライは、福岡堅樹がギリギリつないだオフロードが松島幸太朗に渡ってのトライ。そして前半25分の稲垣啓太のトライは、なんと3本のオフロードが生み出した傑作だ。堀江翔太→ジェームス・ムーア→ウィリアム・トゥポウとつなぎ、稲垣が仕上げてみせた。

かつては「後半20分までは健闘する国」だった。

 後半の戦いぶりを見ると、このチームの核はディフェンスにあることが分かる。後半最初のトライは、福岡が相手のクリス・ハリスからボールをかき出し、そのまま手に収めてのトライだったが、そこに至る一連のディフェンスのプレッシャーが見事だった。そして最後の最後、ゴールラインを背にしてのディフェンスも見事としか言いようがない。もはや理屈ではなく、気持ちが試される場面で、誰も譲らなかったのだ。

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photograph by Atsushi Kondo

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