#987
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<現役騎手が語る 秋競馬 私のベストレース> 浜中俊「大きな転機となった充実のち暗転の秋」

2019/10/13
今年8月には1000勝を達成。一流ジョッキーの仲間入りを果たした30歳が味わった最良の秋からの試練とは。(Number987号掲載)

2015秋華賞 ミッキークイーン

 2007年のデビュー以降、浜中俊はトップジョッキーへの階段をまっしぐらに駆け上がっていった。翌年に出身地の小倉で重賞初制覇(小倉2歳S・デグラーティア)を果たすと、見習騎手を卒業した'09年にはGI初制覇(菊花賞・スリーロールス)を達成。'12年には23歳の若さで年間131勝を挙げ、JRAリーディングにも輝いた。ただしこの年、GIは未勝利。本人もそれを気に病んでいた。

「たくさん勝つのは騎手として大切なこと。でも僕は“大きいレースで結果を出したい”という思いが人一倍、強いんです」

 GIへのこだわりは「華がなかった」と振り返るリーディングを獲ってから、いっそう強くなった。それだけに“最も印象深い秋競馬”に'15年を挙げたのも頷ける。秋華賞のミッキークイーン、天皇賞・秋のラブリーデイと1番人気馬でGIを2勝。最有力と目される馬の鞍上に指名され、結果も出したことは冥利に尽きる経験だった。

 秋華賞は1年前にも、ショウナンパンドラで勝っていた。大本命のオークス馬ヌーヴォレコルトを負かすため、イン狙いに徹してレースを運んだあのときは「前が詰まっていてもおかしくない、博打みたいな競馬」だったが、ミッキークイーンは1番人気。今度は迎え撃つ立場である。

突然の代役、しかも騎乗馬は1番人気。

 その秋華賞、大外枠から課題のスタートを決めて飛び出すと、浜中は積極的に位置を取りに行き、馬群の内めへ潜り込む。

「出遅れたら腹を括って後ろから行くつもりでしたが、“スタートを出てくれればこういう競馬がしたい”と思っていたレースができました」

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photograph by Yasuyuki Kurose

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