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『竜馬がゆく(一)』 あの万城目作品に活かされた、 剣術描写での“司馬マジック”。

2019/05/29

 小説家デビューしてから、はじめてプロとして書き上げた作品『鹿男あをによし』には、中盤結構な枚数を割いて剣道大会のシーンが展開されている。

 執筆時、この剣道大会のシーンが訪れるのが怖かった。なぜならば、それまで剣道の描写など書いたことがなかったし、そもそも剣道に関しても、高校の体育の授業で嗜たしなんだ程度の知識しかなく、本当に試合を書けるのか、迫真のつばぜり合いを描写できるのか、まったく自信がなかったからである。

 しかし、否応なしに剣道大会の場面は訪れ、追い詰められた私は『竜馬がゆく』(文春文庫全八巻)を手に取った。おそらく前回読んでから十年が経過していたはずだが、脳裏には鮮やかに竜馬が剣術道場で活躍するイメージが残っていた。いったい司馬遼太郎はどんな描写をしていたのか。まさに「師匠、勉強させていただきます」とスポーツ小説を研究する弟子の気分で私はページをめくった。

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photograph by Sports Graphic Number

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