菊池雄星、大谷翔平と二人の現役メジャーリーガーを育てたのは岩手県で高校野球に革命を起こした一人の指導者だった。スケールの大きな選手を育てるための決して曲げない信念と、それ故の苦悩を、ロングインタビューで打ち明けた。
イリオモテヤマネコ――。
花巻東の監督、佐々木洋を観ていると、西表島に生息する国の特別天然記念物を思い浮かべてしまう。
花巻東は宮沢賢治の故郷、岩手県花巻市にある甲子園の常連校だ。大谷翔平(エンゼルス)、菊池雄星(マリナーズ)らの母校でもある。「野球後進県」の岩手で、同一高校から、近年、立て続けにメジャーリーガーが誕生したというのは奇跡的な出来事である。
イリオモテヤマネコは島の固有種で、現在、西表島に約100頭しか生息していない。夜行性で警戒心が強く、滅多に人前に姿を現さないことで知られている。
佐々木も同じだ。用心深く、滅多に取材を受け付けない。第三者に関する話ならまだしも、自分の事について語るとなると、なおさら臆病になる。
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photograph by Ryuki Matsuhashi