今年最後のグランドスラム、全米オープンで大坂なおみ選手が弱冠20歳で日本人史上初の優勝を遂げた。僕が現場で感じたなおみさんのテニスと表現には、たくさんのメッセージが込められていた。決勝の相手はグランドスラム23回の優勝を誇るセリーナ・ウィリアムズ。紛れもなく史上最強のプレーヤーだ。試合は、事件と言っていい審判とのハプニングなどにより、世界中が激震した。ただ、テニスを知る人間としてひとつクリアにしておきたいのは、なおみさんは“テニスで勝った”ということだ。
全米でのセリーナは想像以上に強く、勝ち上がるほどにその強さを増していった。決勝で、僕は正直なところ「今のセリーナに勝つことは難しい」と解説した。なおみさんにとっては、憧れの存在を相手に、50周年記念大会で初のグランドスラム決勝。セリーナのための舞台は揃っていた。そんな中で、なおみさんは今大会で成長したすべての要素をぶつけたのだ。第1セットを6-2で取った後の第2セットでは、先にブレークを許し1-3に。会場を含めすべてがセリーナの雰囲気に傾きかけた。「これまでか……」と思ったが、なおみさんはより集中して攻めた。
特製トートバッグ付き!
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
photograph by Hiromasa Mano