「巡礼」と聞くと、反射的に浮かぶ連句がある。「順禮死ぬる道の陽炎」弟子・曲水のこの句に芭蕉は「何よりも蝶のうつゝぞ哀れなる」とつけた。四国遍路に特定して詠んだのではないが、イメージは強烈だ。四国一周、千数百キロ、霊場八十八カ所巡りのウォーキング。江戸の昔、巡礼の道に倒れた人は少なくなかったろう。いまブームのお遍路さんはどうなっているのだろうか。
著者は新聞記者時代に記事を書くため遍路道の半分を歩き、残り半分は仕事を離れて歩き結願(けちがん)を果たした。それから24年、70歳を前に、再び遍路道に立った。自分の時間を売る「勤め」は卒業した。これからどう生きていくかを自分に問いながら歩こうというのだ。徳島の一番札所から時計回りの「順打ち」、その歩みのなかで日々思い感じたテーマを31篇に綴る。それぞれの1篇が長いコラム・スタイルで書かれた。「食べる」「泊まる」「哭く」「死ぬ」等々。興味を引く表題を選んで順不同で読める。
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