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<蘇ったマーメイド> シンクロナイズドスイミング日本代表「全部、泳いでこい」

2016/09/02
会場には大音量の「ジャポン」コールが響いていた。鬼コーチの指導に食らいついた地獄の日々。切れ味鋭い演技は、過酷な練習の賜物だった。8年ぶりに“お家芸”でのメダル獲得となった。

 チーム決勝の本番直前、“鬼”はこう言って教え子たちをプールに送り出した。

「私にとっては9回目のオリンピックだけど、このチームが最も中身の濃い、ハードな練習をしてきた。長さだけでなく、過酷な練習をさせてきた。ロシアのことは知らないけども、他のどの国にも絶対に負けない。だから、今からたった1回の演技、できないはずがない。どんなことが起こってもそれに耐えられるだけのハードで長い練習をやってきたんだから、終わった後にやり残しがあるような演技だけはするな。この1回で全部、泳いでこい!」


 人間、誰だってできれば他者に嫌われたくはない。ところが井村雅代監督は、躊躇なく“鬼”になる。合宿では朝の8時から夜11時までプールサイドに立ち続け、リオ入りしてからも、3度はカミナリを落とした。デュエットで乾友紀子と三井梨紗子が銅メダルを勝ち取ったにもかかわらず、一向に闘志が見えない選手たちに怒り、チーム決勝前最後のリフト練習を中止させたほどだ。

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photograph by Asami Enomoto/JMPA

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