ロンドンではまさかの金メダルなしに終わった男子柔道。“お家芸”の危機が叫ばれる中で最重量級代表となった、異色な経歴を持つ23歳が語る、大舞台への覚悟とは。
柔道男子100kg超級の代表レースを制し、リオデジャネイロ五輪への切符を手にした日の夜、原沢久喜は全日本男子監督の井上康生から1本の電話をもらった。
《日本柔道の再建は、お前に託したから》
原沢にとって井上は、柔道を始めた小学1年生の頃からのアイドルである。
「“あの井上康生”が自分にこんな言葉をかけてくれたというのがまずうれしかったですね(笑)。最重量級の代表になって、国を背負う重みが改めて感じられました」
100kg超級は柔道母国としての威信にかかわる看板階級である。しかし2008年の北京五輪で石井慧(現格闘家)が金メダルを獲得して以降、日本勢は不振が続いており、世界王者に届いていない。'12年のロンドン五輪後に監督に就任した井上に課せられた命題こそ、最重量級の再興だった。
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photograph by Takuya Sugiyama