日本人男子として初めて、個人メドレーで五輪メダルを獲得。
だが彼は「史上初」に価値を見出していなかった――。
何のために泳ぐのか。思考し続ける若者の本音に迫る。
だが彼は「史上初」に価値を見出していなかった――。
何のために泳ぐのか。思考し続ける若者の本音に迫る。
「僕の心根の部分をきちんと言うのは初めてだし、多分、誰にも分かってもらえないような気もするんですけど……」
今しがたまで水中で激しい追い込み練習をこなしてきた萩野公介は、プールサイドの事務室の椅子に深く身を委ねながら、視線を宙のある一点に止めた。顔が赤らんでいるのは、練習の疲ればかりではない。頭をフル回転させている様子が表情から伝わってくる。
「うーん、やっぱり難しいですね。自分の考えていることを上手く言葉に転化できない……。言葉って、人がコミュニケーションを取るために集団生活の中から生まれてきた道具じゃないですか。僕が今考えていることは、僕個人の体験の中から感じたことなので、無理に話したところで皆さんには何の参考にもならないだろうし」
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photograph by Takuya Sugiyama