しなやかな身体から繰り出される150km超の速球と
七色の変化球を武器に、昨季は15勝8敗、防御率2.01。
今季のパで強打者たちが最も恐れる辣腕エースの
ひと味変わった素顔に迫り、追い求めるものを訊いた。
七色の変化球を武器に、昨季は15勝8敗、防御率2.01。
今季のパで強打者たちが最も恐れる辣腕エースの
ひと味変わった素顔に迫り、追い求めるものを訊いた。
「あんまり注目してほしくないですね」
金子千尋は、真顔で言う。
昨年、金子の前を走っていたのは、田中将大ただ一人だった。その田中がヤンキースへ移籍し、金子には今年“パ・リーグのエース”という肩書きがつこうとしているのだが、そこでこの一言である。
150kmに届く直球と、ナックルボール以外のあらゆる変化球を自在に操り、打者を手玉に取る。昨年は15勝8敗、防御率2.01など自己最高と言える成績をおさめた。奪三振数と投球回、完投数では田中を抑えて両リーグトップで、沢村賞の受賞基準7項目をすべて満たしたのは金子だけだった。
しかし、24勝無敗で楽天を初のリーグ優勝、日本一に導いた田中のインパクトは強すぎた。金子の存在は田中の陰に隠れ、沢村賞も田中が受賞した。
はたから見れば不運だ。しかし、「マー君がいなかったら……と考えませんでしたか」という不躾な質問に、金子はこう答えた。
「いい成績は残したいけど、変に注目されたくない」
「いなかったら、もしかしたら去年の成績は残せてないかもしれません。僕は正直、目立ちたくないんです。いい成績は残したいけど、変に注目されたくない。去年はもっとすごいピッチャーがいたから、僕は目立たなくてすんだんです。もし僕がああいう立場になったら『ほっといてくれ』となりますね」
剛と柔。田中と金子のイメージは対照的だ。
気迫をむきだしにして打者に向かっていく田中に対し、金子はいつも表情を変えることなく、飄々と打者に向き合う。マウンドで吠えたり、ガッツポーズをすることはまずない。
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photograph by Hideki Sugiyama