人々の心を動かしたのは、最終プレゼンに臨んだ佐藤真海の言葉だった。
病魔、震災……困難を乗り越えたパラリンピアンが夢見る7年後の未来とは。
<私がここにいるのは、スポーツによって救われたからです。スポーツは私に人生で大切な価値を教えてくれました。それは、2020年東京大会が世界に広めようと決意している価値です>(プレゼンテーションの日本語訳、以下同じ)
東京五輪を呼び寄せた日本のプレゼンテーション。そのトップバッターとして、会場の雰囲気を大きく変えたのは、3大会連続でパラリンピックに出場しているロングジャンパー、佐藤真海だった。
3月のIOC評価委員会が終わった後に、最終プレゼンテーションでも挨拶をしてもらうかもしれない、と、打診されていたんです。「突然の抜擢」と言われているんですけど、自分ではあの場で話をすることを意識して英語の練習もしてきたし、覚悟はあったんです。
でも、まさかトップバッターとは思っていなくて(笑)。ブエノスアイレスに向かう1週間前にそれを言われてビックリしました。東日本大震災後に「スポーツのチカラ」をテーマに、英語のスピーチをした経験を招致委員会の方々に評価してもらっていたのかもしれません。
表情や姿勢でも自分の言いたいことを表現しよう。
プレゼンは他のスピーカーの紹介を含めて4分間しかありませんでした。でも、普段学校などに呼ばれて子どもたちに話しかけるときのようにやろうと思っていました。
最初、子どもたちは私の義足ばかりに視線をやっているし、「かわいそう」「障害者だ」と思っているのが伝わってくるんです。でも、だからこそ自分が感じてきたことを笑顔で素直に話したり、一緒に走ったり、幅跳びをしてみたりするんです。小学生相手だと私が勝つんですけど(笑)、そんなふうにスポーツを通じたコミュニケーションをすると、相手のイメージも変わりやすい。最後にはちゃんと私の目を見て、人と人として接してくれるようになる。だから今回も、言葉に気持ちを乗せて、表情や姿勢でも自分の言いたいことを表現しようとしたつもりです。読まされた原稿では、何も伝わりませんから。
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