憧れのユニホームに初めて袖を通した瞬間、ジャイアンツ田中賢介は自らの置かれた立場を再認識した。2月16日のキャンプ初日。クラブハウス内のロッカーに吊るされていたのは、背番号「88」のユニホームだった。
「ちょっと重いですね」
日本ハム時代は、主力を意味する「3」。通常、コーチ陣やスタッフが背負うような「88」に苦笑するしかなかったが、すべては覚悟の上だった。
昨年オフ、海外FA権を行使してメジャー挑戦を表明した時点で、腹は括っていた。日本に残れば、2億5000万円の年俸と二塁の定位置は約束されていた。それでも「メジャーでプレーしたい」との思いが揺らぐことはなかった。今年1月、複数球団の中からジャイアンツとマイナー契約を結んだ。年俸は最低保証の4万ドル(約360万円)、メジャー40人枠に入っても75万ドル(約6800万円)の条件も受け入れた。夢を実現させるうえで、金額は二の次だった。
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photograph by Yukihito Taguchi