#819
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<指揮官が見る日本の現在地> ザッケローニ 「我々は正しく進んでいる」

2013/01/04
8勝2敗2分――2012年のザックジャパンは、W杯への切符を
大きくたぐり寄せる勝利と同時に、価値ある敗戦も経験した。
この結果を監督自身はどのようにとらえ、生かすつもりだろうか。
コンフェデ杯の対戦国決定直後、その胸中を明かした。

 カップの中身はエスプレッソではなかった。ホテルの一室でインタビューを始める前、アルベルト・ザッケローニはスタッフに緑茶をリクエストした。立ち込める茶の湯気を鼻のほうに持っていき、ゆっくりと喉に含み入れる。

 何か、おかしいかい?

 そんな顔でイタリア人紳士は何気なく凝視していたこちらを見返してくる。

「スシも好きだし、日本茶も好きなんだ」

 日本代表監督に就任して間もなく2年半。日本文化が日常でも染み付いている。いたずらっぽい笑みを向け、カップをゆっくりとテーブルに置いた。

 重圧がのしかかる初体験のW杯最終予選はスタートダッシュに成功してグループBのトップをひた走り、10月には欧州に出向いてフランス、ブラジルの世界列強を相手に真っ向勝負を挑んだ。激戦の連続のなかで、指揮官が手にしたものとは――。ソファに腰を沈めたザッケローニはゆっくりと日本代表の2012年を語り始めた。

誰が出てもレベルを落とさないことがチームの強さに。

 まずブラジルW杯を目指す立場から言えば、最終予選の戦いでは何よりも結果を残すことが最重要項目に他ならない。と同時に、成長という要素も大切にしなくてはならない。

 2012年を振り返ってみると、最終予選では「結果」も「内容」もかなりいいものが出せたと思っている。昨年にアジアカップ、3次予選を経験してきて、段階を踏みながら一つひとつを乗り越えてきた。乗り越えられていることが、すなわち成長のインデックスになっていると思う。

 3次予選のほとんどを本田(圭佑)、長友(佑都)の2人を欠いて戦ってきたわけだが、最終予選でも9月のイラク戦では3人のディフェンダーが出場停止で、香川(真司)もイラク戦とアウェーのオマーン戦を欠場した。だが我々はチーム全体の力で乗り越えてきた。彼らの代わりに入った選手が実力を証明してくれたからだ。「誰々がいないから勝てない」などという論調にさらされてもいない。誰が出てもレベルを落とさない。このあたりがチームの強さの元にあるものだと自負している。

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photograph by Naoya Sanuki

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