「火事と喧嘩は江戸の華」という古い言い回しはあるが、競馬における落馬を見たいと思う人はいない。生身の人間や馬が危険にさらされる事故は悲惨だが、そのほとんどが不可抗力によるものであることだけは強調しておきたい。
5月9日の栗東トレセンの坂路コースに、およそ似つかわしくない悲鳴が数分間、断続的に何度も上がった。急坂を上がり終えた1頭の馬が、頂上で騎乗者を振り落として暴走。よりによって、多くの馬が上がって来る坂路をUターンで下って行ってしまったのだ。その光景はまさに背筋も凍る恐ろしさ。高速道路の逆走事故が頭に浮かんだほどだ。
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photograph by Yuji Takahashi