ゆったりとしたモーションから繰り出される高回転の球筋には、とても故障者とは思えないほど、新たな力強さが芽生えていた。レッドソックス松坂大輔が6月10日に右肘の靱帯移植手術を受けてから、5カ月以上が経過した。11月中旬の段階で、投球練習は距離約30m、球速130km前後まで戻った。その間、フロリダ州フォートマイヤーズで孤独なリハビリに専念してきた松坂は、慎重に言葉を選びながらも、ハッキリと手応えを口にした。
「フォームを大きく使えて、少しずつ形が見え始めてきた感じですね」
近年では珍しくなくなったとはいえ、投手生命を左右しかねない大手術だった。成功率9割のデータが残る一方で、再手術を経ても復帰できないケースは少なくない。日米両国で常に注目されてきた松坂にとって、重大な決断だった。手術直前には「野球人生の最大のピンチ」と受け止め、「試練を与えてくれた野球の神様に感謝できるようになれたらいいです」と、苦しい胸の内を明かした。
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photograph by Yukihito Taguchi