「こういうことはあるんだ! 集中しろ!」
心を鬼にして言ったのだろう。3月11日午後。強い地震に見舞われた茨城県龍ヶ崎市の流通経済大グラウンドでは、U-20日本代表と高校日本代表の合同練習が行なわれていた。照明塔が大きく揺れ、クラブハウスは激しく軋んだ。揺れが収まったとき、人工芝の隙間からは泥水が噴き出し、地割れができていた。隣の建物は窓ガラスが割れていた。
そんな状況でも、ふたつの若手代表チームは練習を再開した。不安げな表情を見せる若い選手たちを、コーチのひとりは、あえて厳しい言葉で叱咤したのだ。
災害の規模がまだ分からないゆえの言葉でもあったろう。違和感は覚えなかった。ピッチには、阪神大震災を経験した選手やスタッフも大勢いた。大きな余震も再三襲ってきた。誰もが不安と心の痛みを圧し殺し、ボールを追っていた。
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photograph by Nobuhiko Otomo