不動の中心選手に成長したボランチが抱く代表の現状に対する本音、そして
W杯への思いとは――。
5月1日ブンデスリーガ、ドルトムント対ヴォルフスブルク。ボールがタッチを割ると、長谷部誠はすかさずチームメイトの元へ走り言葉をかけた。その口調の強さは、スタンド最上階のプレス席からでもはっきりと分かるほどだった。
「前半は自分たちのリズムで試合が進められなかった。ゴールを決めたい前線の選手はパスが来ないことに苛立って、守備をしなくなっていた。そういうことを直していかないと、チームとして戦えないんです」
長谷部はこの日先制点をアシスト。試合は引き分けで終わったが、上位進出を狙うドルトムントの8万人近いサポーターを落胆させるには十分な仕事だった。
シグナル・イドゥナ・パルクで、奮闘する日本人の姿はとても頼もしく見えた。4年前、同じスタジアムで日本代表はブラジルを前になす術なく散ったが、そのときのピッチに長谷部の姿はなかった。'06年2月のアメリカ遠征で代表デビューを飾っていたが、「W杯メンバーに入れる可能性はないと思っていた。まだまだそのレベルじゃないことは、僕自身が一番分かっていた」と振り返る。
4年経った今、長谷部は日本代表に欠かせない中心選手となった。W杯南アフリカ大会で、日本代表にもっとも大きなプラスアルファをもたらしてくれるのは、この進境著しいボランチではないだろうか。
ボカと戦って自分のサッカーに対する甘さを思い知る。
長谷部は'02年に浦和レッズへ入団すると、2年目にはレギュラーに定着した。その後も毎年のように補強されるライバルたちからポジションを守り、ナビスコカップ、天皇杯、Jリーグ、AFCチャンピオンズリーグとすべてのタイトルを獲得。しかし満足はできなかった。
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