ブラジル戦を終えた後、ピッチに大の字になって、中田英寿が“ひとり”で泣いていた。
声をかけたのはキャプテンの宮本恒靖だけで、他の選手は目をそらすようにして控え室に消えていった。もしブラジル代表のロナウジーニョが試合後に泣いていれば……みんなが寄り添い、肩を叩いて励ますはずである。このW杯では、最後まで中田のまわりに輪はできなかった。
結局、中田はリーダーになれなかった。
バスから降りてくるとき、乗り込むとき、談笑している他の選手とは距離を置いて、アイポッドを片手にひとりで歩いていた。
中田なりに溝を埋めようと努力はしていた。
クロアチア戦で川口がPKをストップしたとき、ものすごい勢いで川口に抱きついた。ブラジル戦で玉田が先制点をぶち込んだときは、ピッチの反対側からわざわざ駆けつけて、玉田の頭を叩いて喜んだ。
日本代表の練習では、最後にシュートをして、決めたものから練習を切り上げるジーコ流の締めくくり方がある。ボン合宿2日目、みんなが列を作っているとき、中田が猛然とダッシュして先頭に割り込んだ。茶目っ気たっぷりに。
だが、「割り込むなよ」と笑顔で突っ込んでくれたのは三都主だけで、他の選手は何事もなかったかのように見ぬフリをした。中田が恥ずかしそうに出したサインは、ボンの空にあっさりと霧散してしまった。
中田にとって、ジーコジャパンは我慢の連続だった。
まずポジションのしがらみ。昨年のコンフェデ杯のときに、中田は言った。
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