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ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
「ストレスなのか蕁麻疹とか出た」DeNA退団→海外挑戦4年目の32歳で始めた“自己改革”「これまでの打撃理論やアプローチをすべて捨てる覚悟で」
text by

石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byTomo Otosaka
posted2026/09/30 06:25
横浜DeNA退団後、米独立リーグ球団や巨人を渡り歩いている乙坂智
「オフの日本でのトレーニングで圧倒的な手応えを掴んだんです。これを磨いていけば絶対にいけるというものを」
やっぱり、こうなるよな
乙坂は打撃理論やアプローチなど、これまで持っていたものをすべて捨てる覚悟で挑んだという。加えて根本から自分を変えるために、食事や嗜好品などもこれまでになかった選択をするようにもなった。
「海外に出て3年間、メジャーを目標にしていましたが、そこには到達できませんでした。そこで『俺のやり方、ひょっとしたら合ってないんじゃない?』と、自分を初めて疑ってみて、すべてを一から変えたんです」
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信じていたものを捨て、変えることは勇気がいることだ。ただ乙坂に残された時間は少ない。
これまでと同じやり方、同じ結果では、需要は減っていくばかりだ。乙坂は一念発起し、自分自身を劇的に変える覚悟をした。
「最初はストレスなのか蕁麻疹とか出たんですけど、だんだんと手応えを感じるようになっていきました。また自分の中身を変えると強烈な引力が発生するのか、それに引き寄せられる人とか環境があって、あらゆる意味でいい効果がありましたね」
結果、この自己改革がヨークでの好調に繋がり、そして乙坂が言う、環境においても吉報を招くことになった。
5月9日、シアトル・マリナーズから乙坂とマイナー契約を結んだことが発表された。
突然の朗報。日本の球団を自由契約にされ、メキシコ、ベネズエラ、米独立リーグを渡り歩き、ついにこじ開けた夢の扉。前例なき軌跡を描き、乙坂はついにMLBへの挑戦権を手に入れた。そのときの心境を、乙坂は正直に言う。
「やっぱり、こうなるよなって思っていたんです」
はっきり言ってNPBより環境がよい
意外な言葉だった。「ようやくですよ……」みたいな言葉を予想していたのだが、乙坂は別の意味での達成感を口にした。
「オフにこれまでにないほどの濃い時間を過ごしてきたので、あれだけやってきたんだから……という思いがあったんです。同時に、この挑戦をサポートしてくれた人や応援してくれていた人に、いいニュースが届けられるなという思いもありました。ちょっとだけ恩返しできたかなって」
柔らかい表情をして乙坂は語った。
乙坂はマリナーズ傘下であるトリプルAのタコマ・レイニアーズに配属された。メジャーではないが、初めて体験するMLBの空気。気持ちはもちろん高揚したが、意外だったのはその環境だった。
「マイナーはよく“ハンバーガーリーグ”って言われて環境がよくない、なんて話を聞きますけど、毎日芝を刈るスタジアムはすごくきれいですし、足に負担が掛からず、人生で一番いいと感じた球場でした。また食事も肉、魚、果物がふんだんに用意されていますし、遠征の際も自分で荷物を運ぶこともない。練習設備も整っており、コーチもずっとついてくれる。はっきり言ってNPBより環境がよくて、ここは天国かと思いましたよ」
乙坂は笑いながら言った。中南米など他国のリーグを知っているだけに、その言葉には実感がこもっていた。
さあ、あとは結果を出すだけだ。マリナーズしかり、レイニアーズでもケガ人が出ていたとのことで、そこに補填されるものと乙坂は最初考えていた。だが、現実は違った。

