甲子園の風BACK NUMBER

「野球観、人生観を変えてくれた」箕島との“延長18回”を星稜・山下智茂監督はどう戦ったか…サヨナラ危機で出た奇跡のプレーに「私もびっくり」 

text by

元永知宏

元永知宏Tomohiro Motonaga

PROFILE

photograph bySankei Shimbun

posted2026/09/09 11:04

「野球観、人生観を変えてくれた」箕島との“延長18回”を星稜・山下智茂監督はどう戦ったか…サヨナラ危機で出た奇跡のプレーに「私もびっくり」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

劇的な展開が次々と起きたゆえに「史上最高の試合」と呼ばれる星稜対箕島の延長18回を、当時の星稜監督・山下智茂が語った

 山下が選手に送ったサインはスクイズだった。

 しかし、九番の若狭徹がそれを見落とし、ランナーはタッチアウト。その後、若狭が三振に打ち取られて追加点は奪えなかった。

あとひとりで勝利の場面で、まさかの……

 それでも膠着状態の試合で、相手のミスによる1点を加えた星稜は絶対的に有利だ。あと3つのアウトを取れば王者を倒すことができる。

ADVERTISEMENT

 堅田は疲れも見せず、テンポのいいピッチングを続ける。12回裏、八番、九番を打ち取り「あとひとり」となった。そこで迎えたのが強打のキャッチャー、嶋田宗彦だった。

 試合を振り返る時、山下が最も印象に残る場面に挙げたのが嶋田のこの打席だ。

「1点を取って、ツーアウトになった時点で『もう勝ったな』と思いました。試合後のインタビューのコメントを考えていたくらいです。それがダメでしたね。のちのち(箕島監督の)尾藤(公)さんと話したら『俺もそうだった』と言っていました」

 しかし、試合はまだ終わっていなかった。嶋田は打席に入る前に「ホームランを打ってきます」と尾藤に宣言し、言葉通りに同点ホームランをかっ飛ばしたのだ。

 12回表のピンチの場面、スクイズを防ぎ、三振を奪ったあと、キャッチャーの嶋田はボールを地面に叩きつけるようにしてマウンドに投げ返したと石井が証言する。

 失点したことに対する悔しさや苛立ち、嶋田の負けん気の強さがその動きに表れていた。

「それは知りませんでした。でも、気持ちの強い選手でしたからね。そうじゃなかったら、追い込まれた場面で宣言通りにホームランを打つことなんかできないでしょう。本当にすごかったですね」

 あれほどの逆境で実力を発揮することが今の高校生にできるかどうか。昭和の野球で培われた反発力、メンタルの強さが打たせたホームランだったように思える。

【次ページ】 サヨナラ負けの大ピンチに出たミラクルプレー

BACK 1 2 3 4 NEXT
#星稜高校
#箕島高校
#山下智茂
#石井毅
#堅田外司昭
#音重鎮
#山下靖
#嶋田宗彦
#若狭徹
#尾藤公

高校野球の前後の記事

ページトップ