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「WBC世界一のベネズエラ人左腕」ホセ・キハダはなぜヤクルトに来たのか? エンゼルスでは大谷翔平とプレーも…本人が明かした知られざるルーツ
text by

近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2026/08/31 17:02
ヤクルト前半戦躍進の立役者ホセ・キハダ投手。WBC世界一に輝いたベネズエラ人左腕はなぜスワローズに来たのか?
「野球は5歳の頃に始めたよ。家のすぐ近所にスタジアムがあって、兄たちがそこでソフトボールをやっていた。スタジアムには毎日通っていた。仲間がいたし、家の大変なことは束の間忘れられたから。おかげで、悪い連中とも付き合わずに済んだしね」
子供の頃からさぞかしすごい球を投げるピッチャーだったんでしょうね? と聞くと、意外な答えが返ってきた。
「いや、僕は元々一塁手か外野手で、バッティングが得意だった。いわゆるパワーヒッターで、当たればよく飛んだよ」
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キハダが14歳になる頃、ベネズエラの社会は目に見えて酷くなった。政治の混乱と経済の停滞は静かに、確実に人々の暮らしを圧迫していく。どれだけ働いても生活は楽にならず、月給をドルに換算すれば、3ドルにも満たない。両親と兄たちは朝から晩まで働き続けたが、家計は苦しかった。
「その時期、僕もちょっと野球と距離を置き、近所の大きなパン屋で仕入れたパンを郊外へ売りに行った。家計を助けたかったし、自分の小遣いも欲しかったから」
当時の夢は? というありきたりな質問に、キハダは少し大袈裟に「ワオ」と反応し、言葉を続けた。
「あの頃は毎日が大変すぎて、夢なんて見ることすらできなかった。だってそもそも僕は、どこかの強豪チームや名コーチのもとで真剣に野球のトレーニングに取り組んだことすら、一度もなかったんだから」
その一球が、人生の軌道を変えた
ある日の午後、久しぶりのソフトボールの試合で、キハダは外野でキャッチしたフライをいつもと同じようにホームへ送球した。彼の左手を離れたソフトボールの球が、強く、ホームベースに向かって一直線に伸びていく。もちろん彼はその一球が、彼の人生の軌道を変えてしまうことを知らない。

