野球クロスロードBACK NUMBER
「医学部志望がメンバーに4人」福岡の公立進学校が“甲子園出場”の衝撃…それでも東筑が“野球のチーム”で挑んだワケは?「さすがに勉強に身が入らなくて」
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2026/08/07 17:00
甲子園で先頭打者本塁打を放った東筑のキャプテン・平山護。公立進学校の雄として大舞台に挑んだが、初戦で神村学園に敗れた
主力として甲子園を戦った中谷は、理学療法士など医療体制を備え代表校をサポートしてくれる、高野連の対応に感銘を受けた。
「医療チームを整えてくれる方たちがいるからこそ、選手である自分たちは満足のいくプレーができると改めて思いました。自分も野球経験者としてわかる痛みもあるので、将来的にスポーツドクターとしてチームに関わることができたら、プレー面だったり野球の戦術面だったり、いろんな意味も含めてサポートできるんじゃないかなって。そうなれるようにこれから頑張ります」
山田も中谷と根っこは同じだ。
ADVERTISEMENT
故障しがちだったなかベンチ入りメンバーに入れるまでに野球で燃焼することができたのは、整形外科医など医療従事者がいたからだと、はっきりと言った。
「2年半、本気で甲子園を目指せられたのは(整形外科の)先生に怪我を治してもらったからですし、本気で物事を変えようと思えば必ず道は開けるっていうことを証明できたと思います。浪人してでも医学部には行きたいんで、これから塾での勉強も本気で頑張ります」
監督は選手に「感謝の気持ちでいっぱい」
昨年の秋に母校である東筑の監督に就任した山下は、試合後の取材で「ありがとう」と何度も発していた。
監督として選手を甲子園に「導いた」のではなく、「連れてきてもらった」といった感情が勝るからでもあった。
「選手からすれば途中で監督が代わり、複雑な思いのなかで新チームをスタートさせたところもあったでしょう。けど、勉強と部活の両立で大変ながらも『うまくなろう』『強くなろう』と、私についてきてくれた。なので、感謝の気持ちでいっぱいなんです」
しみじみと胸の内を語り、山下は彼らの未来を信じるように言葉を結ぶのである。
「勉強も野球も同じ熱量を捧げられる子たちなので。これからは勉強のほうをしっかりとやってくれると思います」
ここで紡いだ、医学部を目指す4人の物語だけでもわかる。
私学全盛と呼ばれる近年の高校野球界において、公立の進学校が甲子園出場という一石を投じた。その熱量が絶えぬ限り、これからいかなる分野に進もうと彼らは果てしなく動力を生み出し、目的を果たすはずである。

