- #1
- #2
甲子園の風BACK NUMBER
「もう投げる場所がない」弱気発言の6日後…沖縄尚学・末吉良丞“まさかの復活”に密着「末吉を完璧に守った」比嘉公也監督がニンマリした“ある瞬間”
posted2026/07/25 17:01
沖縄県大会の準決勝と決勝に登板し、2年連続の甲子園を決めた沖縄尚学・末吉良丞。復活のウラには比嘉公也監督の深謀遠慮があった
text by

松永多佳倫Takarin Matsunaga
photograph by
Takarin Matsunaga
◆◆◆
7月12日、準々決勝の糸満戦。
台風9号の影響で1日順延した準々決勝は、その残り香でグラウンド内に強い風が吹き荒れていた。この風がどう影響するのか。
ADVERTISEMENT
沖縄尚学の先発は新垣有絃。初戦、2戦目と先発はサウスポーの久高大瑚だったが、打力に定評がある糸満にエースの新垣をぶつけるプラン通りの起用だった。
末吉良丞は「4番・DH」のスタメンで、もはや打撃陣に欠かせない要となっていた。
試合は新垣、久高の継投により3対2で接戦をものにする。久高は9回のみの登板だったが、149kmを投げるなどストレートは常時140kmを超えた。完全に化けた。
漏れ出した本音「もう投げる場所がないっていうか…」
頼れる2人の好投に、末吉は試合後の囲み取材で素直に心境を吐露した。
「まあそうですね。投げたいっちゃ投げたいですけど、もう投げる場所がないっていうか……。2人ともいいピッチングをしているので、投げられる場面はないんじゃないかなと思ってます。正直、そんなに点を取られることはないでしょう、という感じで見ています」
安定感抜群の右の本格派・新垣に加え、左の技巧派だった久高が本格派に急成長し、沖縄尚学の新しい2本柱となった今、故障明けの自分が入る余地はないのではないか――いつも強気な末吉の感情の揺れ動きに驚かされた。
監督の比嘉公也に訊いてみても「新垣と久高がいますし、饒平名(麻貴人)も状態は悪くないので、準決勝、決勝はいいピッチャーをどんどんつぎ込んでいきたいなと思ってます」との返答。末吉の復帰登板に関して比嘉が難しい顔で慎重な発言をするのは、もはや馴染みの光景となっていた。
あれほど投げたくてウズウズしていた末吉のトーンダウンは、すべてを示唆しているようにも思えた。この時点で「この夏の登板は完全にない」と筆者は確信した。それが大きな間違いだったと気づくのは、わずか6日後のことだった。
まさかの準決勝先発「末吉が潰れてしまうのでは」
7月18日、準決勝の名護戦。
「ピッチャー、末吉くん」
スターティングメンバーのアナウンスに球場がどよめき、揺れた。


