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「千年分の苦労を引き受けた」“任務”を終えた常盤山部屋おかみが振り返る、波乱に次ぐ波乱の日々…元横綱貴乃花からの電話に「ただただ呆然」
text by

佐藤祥子Shoko Sato
photograph byTakashi Shimizu
posted2026/07/24 11:01
仲睦まじい常盤山親方と、おかみのルミコさん
第一回カラオケ大会の優勝者は…
「私のなかで『もっと弟子のことを知りたい』という想いがありました。ただ楽しんでいるだけではなく、『この子は第1回目ではこの歌を唄って点数が何点だった』などと全部メモしていたものです。毎回、唄う歌の歌詞を見ていると傾向がわかったり、『きっとこの部分の言葉が好きなんだな』と気が付いたりする。幕下で足踏みしている時の隆の勝がバンプ・オブ・チキンの『ハイブリッド・レインボウ』という歌を唄っていたんですが、なんとも歯がゆい今の気持ちを唄っているのかなぁ、今の自分を表現しているのかな、と思ったり。親方は稽古を見てる。おかみの私だって彼らを“見たい”。おかみと弟子というより、『せっかく縁があって出会った人間同士』。だから、すべてを知ることはできないけれど、知る努力はしたかったんですね」
夫には「うちのおかみは何事も真剣過ぎる」と言われるという。ちなみに第1回カラオケ大会の優勝者には親方から賞金が出たのだが、最高得点は、なんと“角界の五木ひろし”との異名を取る親方本人だった。「賞金は次回に繰り越しましたけどね」とルミコさんは当時を想い出し、満面の笑みを見せる。
「貴乃花部屋の力士、裏方全員をよろしくお願いします」
新生・千賀ノ浦部屋の師匠とおかみとして約2年半が経ち、弟子たちとの日々の暮らしにも慣れ、稽古に打ち込む毎日が続く。弟子たちには、ことあるごとに声を掛けてメールで励まし、誕生日には“バースデイポチ袋”のお祝いを欠かさなかったルミコさん。そして2017年9月場所後、隆の勝が新生部屋から初の十両に昇進し、翌年9月場所には新入幕を果たした。初めて手にした、たった一本の懸賞金は、隆の勝の手からルミコさんに渡された。おかみとしての喜びを涙ながらに噛みしめていたのも束の間、一本の電話が夫の元にかかって来た。
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「貴乃花部屋の力士、裏方全員を親方の千賀ノ浦部屋でよろしくお願いします」
相撲協会を電撃退職し、この日の夕方に会見を開いた元横綱貴乃花からの電話だったのである。ルミコさんの著書『千年おかみの哲学』(致知出版社)には、質疑応答も一切ない1分にも満たない電話に「(私は)ただただ呆然としていました」とも書かれている。
あまりに急な展開と、その責任の重さに常に“ドラえもんのような笑顔”を携えている夫からは、さすがに笑顔が消えた。
親方夫婦はこの日から、相撲部屋ならではの”喜怒哀楽”を次々と味わうことになる。
《続く》


