将棋PRESSBACK NUMBER

「精神的に良好とは言えない」苦境を乗り越えた藤井聡太六冠が伊藤匠二冠と王位戦で頂上決戦中だが…「両者は読みが合わない」ある棋士の視点 

text by

田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

PROFILE

photograph by日本将棋連盟

posted2026/07/19 06:00

「精神的に良好とは言えない」苦境を乗り越えた藤井聡太六冠が伊藤匠二冠と王位戦で頂上決戦中だが…「両者は読みが合わない」ある棋士の視点<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

藤井聡太六冠は王位戦に臨んでいる

 藤井は「《名人に定跡なし》という言葉がありますが、シリーズを通して力将棋を多く指してみると、自分はまだそういった域ではないと感じました。永世名人は江戸時代から続く重みのある称号。それにふさわしい強さを目指し、来期の名人戦に臨みます」と心境を語った。

 ヒューリック杯第97期棋聖戦五番勝負は、藤井棋聖に服部慎一郎七段(26)が初挑戦した。服部は昨年の新人王戦で、2連覇と3回目の優勝をした若手精鋭。故郷の富山県にタイトルを持ち帰りたいとの思いで臨んだが、藤井の壁は厚かった。

 藤井棋聖は服部七段に3連勝し、7期目の棋聖を獲得した。この記録は大山康晴十五世名人と並んで歴代2位である。以上の戦績のように、藤井六冠は3月の王将戦第5局から7月の王位戦第1局を迎えるまで、公式戦で14連勝していた。

藤井vs伊藤の頂上決戦が実現

ADVERTISEMENT

 伊藤二冠は第11期叡王戦五番勝負で、挑戦者の斎藤慎太郎八段(33)を3勝2敗で下し、3期目の叡王を獲得した。また第67期王位戦の挑戦者決定戦で、羽生善治九段(55)に勝って王位戦で初挑戦した。

 タイトル戦でともに防衛を果たして充実している藤井と伊藤が、王位戦で頂上決戦することになった。

 藤井王位と伊藤二冠の対戦成績は、王位戦第1局を迎えた時点で藤井15勝、伊藤6勝(ともに1持将棋)。タイトル戦の対局は昨年の第73期王座戦五番勝負以来で、伊藤が3勝2敗で藤井を破って王座を獲得した。藤井は「全体的に終盤で競り負ける形になってしまった」と敗因を語った。伊藤は「ほかのタイトル戦でも藤井さんに挑戦したい」と語り、それが今年の王位戦で実現した。

ある棋士によると…両者は読みが合わない

 王位戦第1局では「振り駒」が行われ、藤井の先手番に決まった。持ち時間は各8時間(ストップウォッチ式で59秒以下は切り捨て)。

 戦型は両者の対戦で定番である角換わりとなった。伊藤は「右玉」の手法を採り、藤井は「腰掛け銀」に構えた。公式戦で類似の実戦例が多い。藤井が玉の囲いを「穴熊」に組み替えると、伊藤はわずか1分で△6五歩と突いて桂を跳ねて仕掛けた。研究手順かと思われた。藤井も「消去法(局後の感想)」から▲4五桂と銀取りに跳ねたが、控室では疑問視する声が多かった。

 その後、伊藤が中段に馬(成り角)を作ると、藤井は9筋の端攻めと7筋の玉頭攻めをからませ、思わぬ展開に進んだ。伊藤は△8六歩以下の順で先手の玉頭を攻めた。藤井は予想していなかったようで95分も長考した。ある棋士によると、「両者は読みが合わない」という。

【次ページ】 見ごたえある攻防…第2局は藤井が1勝1敗に

BACK 1 2 3 NEXT
#藤井聡太
#伊藤匠

ゲームの前後の記事

ページトップ