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「真っ暗なリビングで膝を…」家族だけが知る、男子バレー清水邦広“命を削るような壮絶な時間”「夫は最後の一日まで、ずっと準備し続けていました」 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byOSAKA BLUTEON

posted2026/07/17 11:07

「真っ暗なリビングで膝を…」家族だけが知る、男子バレー清水邦広“命を削るような壮絶な時間”「夫は最後の一日まで、ずっと準備し続けていました」<Number Web> photograph by OSAKA BLUTEON

引退セレモニーでは妻・七菜さんと娘、息子も駆けつけた

 新たな門出。優勝で締めくくった現役生活を終えて間もなく2カ月が経つ。大阪ブルテオンのコーチとなった今は、全国各地のバレーボール教室に飛び回り、七菜さん曰く「現役の頃より忙しい」という時間を過ごしているが、時折、実感する「引退」に寂しさも滲ませるという。

「バレー教室の時に、選手はユニフォーム、スタッフはジャージで参加するんですけど、夫も今までの感覚でユニフォームを着て登場したら、『清水さん、ジャージです』って注意されたらしくて。帰ってきてから『めっちゃ寂しかったわー』と言っていました(笑)」

 家族にとっても新しい日常が始まった。家事も育児も、じつは積極的だという清水の意外な姿を明かしながら、「でも、ケンカはしょっちゅうする」と明るく振り返る。

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「座ってゆっくりしながらご飯ができるのを待っていてくれればいいのに、帰ってきたら座らずすぐ掃除機を持って部屋掃除。トイレやお風呂掃除もマメにするし、洗濯の干し方やハンガーにもこだわりがある。私はおおざっぱなので『そんなのどっちでもいいじゃん』と思うのに、夫は寝る時も部屋のものがすべて元通りの位置にないと寝られないぐらい、めちゃくちゃ細かいんです(笑)。私にも私のペースがあるのに、夫から『七菜がやらんからじゃ』と言われるので、『うるさーい!』と小競り合いが始まる(笑)。でも、夫のおかげで部屋はびっくりするぐらいきれいです」

「あの子には、おかてがある――」

 この先どんな人生を歩むのか。大阪ブルテオンでコーチとしてスタートを切った清水には、壮大な夢がある。自分の本心をなかなか口にしない夫が、珍しく「こうなりたい」と話すのを聞いた七菜さんが、夫が描く“これから”を明かす。

「心の中では、いつか日本代表を率いるようなトップレベルの指導者になりたいと思っているけど、なかなか口に出すのは憚られるみたい。でも、目指せるところまで目指せる準備をしたいとは言っていて、トップレベルの指導を学ぶために、選手としては行けなかった海外にも行きたい、と。選手の時は支えてくれるスタッフの方々がいて、舞台が完璧に用意された中でベストパフォーマンスを出せばよかったけれど、これからは自分がコーチとして支える側になる。そうなるとコーチとしての彼は誰も見てくれないから、そこは私がフォローしてあげないとって思っているんです(笑)」

 清水邦広のバレーボール人生には、多くの人が携わっている。

 必要な技術やメンタル、覚悟を授けてくれた恩師がいた。いつも目の前で壁になるライバルも、世界への道を拓くきっかけを与えてくれた指揮官がいた。いいことばかりでなく苦しいことも多かった現役生活の晩年を、一番近くで支えてくれた妻がいた。

 これまでの道のりを辿れば、母・香代子さんの言葉が重なる。

「あの子には、おかてがある――。この先も、その大事な“おかて”を持ち続けて、大切にしてほしいんです」

 母の言葉が示すように、これまでも出会うべき人に出会い「やりきった」と思える現役生活を過ごしてきた。そして、指導者として生きるこれからも、出会うべき人たちに出会い、素晴らしい指導者になるはずだ。

 きっと、この先も。縁に恵まれ、人に恵まれ、愛すべき人生を生きていく。〈全3本/第1回から読む〉

#1から読む
「じつは相撲部屋からスカウトも…」男子バレー清水邦広の母が語る“ご縁に恵まれた”バレーボール人生「ヤンチャだった中学時代の“眉毛事件”」
この連載の一覧を見る(#1〜3)

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