濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「腹が立ちました。でも自分が未熟だった」元アイドルの若手レスラーが“SNSの動画拡散”に本音「肩、太ももがサイズアップ」橘渚が語るプロレス最優先の覚悟
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2026/05/11 11:03
マリーゴールドで活躍する女子プロレスラーの橘渚
意識した「芸能活動とプロレスは別物」
橘自身はプロレスをやる気はなかったが、事務所の社長に「大丈夫大丈夫」とすすめられた。デビューしたもののケガが多く、試合ぶりも芳しくない。プロレスファンだったことがなく、自分の理想像を思い描くこともできない。とにかく教わった技をリングで出すだけだった。
それでも「芸能活動とプロレスは別物」という意識で真剣に取り組んでいたら「こういうことなのかな」という感覚を掴む時が来た。昨年5月の函館大会。先輩だが同年デビューの南小桃とのシングルマッチが、敗れたものの高く評価された。
「その頃は凄く焦ってたんです。なかなかうまくいかないし、小桃さんがどんどん先にいってしまうようで、プレッシャーが凄かった」
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頑張ろうという気持ちがあるからこそ焦る。しかし先輩たちからのアドバイスは「焦らないこと」だった。それも精神面だけでなく具体的な技術として、だ。
「試合中でも、余裕を持ってお客さんを意識するといいよって。相手とか自分の技にばかり集中するんじゃなくて、お客さんの声を聞いて顔を見てみる。小桃さんとの試合でそれができるようになりました。お客さんと対話しながら試合をしているようで、自分でも楽しかったんです」
“演者”としてのプロレスラー
プロレスは対戦相手との闘いだが、観客と向き合うものでもある。一流の落語家が客の呼吸までコントロールすると言われるように、プロレスラーはリングの四方を囲む観客と向き合う。
あるベテランレスラーは、リングアナにコールされた時に沸いている方向に重点的にアピールし、そこを起点に会場を盛り上げていくと言っていた。観客の表情や声援を感じる時間を取ることで、攻防に“間”が生まれるということもある。
次々と技を繰り出すだけではなく“間”があれば観客にとって見やすい試合になるし、選手は呼吸を整えることもできるだろう。“演者”としてのプロレスラーのあり方と言えばいいのか、橘はその入口に立ったのだ。


