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玖麗さやか25歳が叶えた夢「私は上谷沙弥にはなれない。だけど…」なぜ2年4カ月でスターダムの頂点に立てたのか? 敗れた上谷は号泣「私の赤いベルト…」
posted2026/04/30 17:46
上谷沙弥を倒し、赤いベルトを巻いてスターダムの頂点に立った玖麗さやか。4月26日、横浜アリーナ
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原悦生Essei Hara
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Essei Hara
スターダムの玖麗さやか(25歳)は左手をしっかりと握りしめていた。よく見ると指の間から羽が出ている。
4月26日、横浜アリーナ。上谷沙弥(29歳)を下し、赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム王座)を巻き、第21代王者となった玖麗は花道を歩いていた。ステージには白い羽が舞い降りていた。それは1年前に中野たむの引退で見た光景と酷似していた。あの時の羽は悲しく見えたが、今回の羽は玖麗を祝福していた。玖麗はその羽を自分の掌につかんだ。上谷沙弥vs.玖麗さやか――「中野たむによって導かれた戦い」はそんなフィナーレを迎えた。
デビュー2年4カ月で「女子プロレスの頂点」に
44分前、白と水色のドレスガウン姿に槍を持って入場ゲートに立った玖麗が一瞬、中野に見えてしまった。約8000人の観客席からどよめきと歓声が起きた。
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この試合の大方の勝者予想は上谷だった。私も、10人ほどに予想を聞いたが、全員が上谷と答えた。もしかしたら、という思いはあっても、玖麗という回答は得られなかった。それは無理もない。上谷の知名度を10としたら、玖麗は3か4だろう。それくらい一般の人の認知度には隔たりはあった。
もし、玖麗が勝つと答えた人がいても、フィニッシュとなった前方回転のファイヤーバードスプラッシュを予想できた者は皆無だったのではないか。私はもし玖麗が勝つ場合は、バイオレットスクリュードライバーだと確信していた。
「闇落ちした上谷のようにはなりたいと思わない」と玖麗は言っていた。玖麗は正統派の上谷に憧れていたからだ。だからデビュー戦の相手を上谷にしてもらった。
そんなこともあって、上谷のH.A.T.E.以前のフィニッシュであるファイヤーバードスプラッシュを選択したのだろう。
帰り道の雑踏で「番狂わせ」「大金星」「サプライズ」という言葉を多く耳にしたが、それは玖麗への過小評価だったのかもしれない。デビューからわずか2年4カ月で玖麗はスターダムの頂点に立ってしまった。言い換えれば、女子プロレスの頂点と言ってもいい。
「キャリアは関係ない」と玖麗は真っすぐに戦った。その結果が、赤いベルトだった。


