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「オレはなにもしない監督だ」落合博満がいま明かす巨人との頂上決戦“奇襲”舞台ウラ「相手は関係ないよ」「奇襲だというけれど…コイツしかいない」

posted2026/05/19 06:02

 
「オレはなにもしない監督だ」落合博満がいま明かす巨人との頂上決戦“奇襲”舞台ウラ「相手は関係ないよ」「奇襲だというけれど…コイツしかいない」<Number Web> photograph by JIJI PRESS / Takuya Sugiyama

就任3年目となる'06年に2度目の優勝をした中日・落合博満監督。胴上げ後は目を潤ませながらファンの声援に応えた

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酒井俊作

酒井俊作Shunsaku Sakai

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JIJI PRESS / Takuya Sugiyama

 火花散る三つ巴の時代を、その目はどう捉えていたのか。今なお語り継がれる数々の“奇襲”と、透徹した采配。岡田阪神・原巨人との頂上決戦に滲んだ、一途な野球観。監督退任から15年。落合竜の核心を求めて彼を訪ねた。
 発売中のNumber1142・1143号に掲載の[特別インタビュー]落合博満「試合前から戦いは始まってるんだ」より内容を一部抜粋してお届けします。

「オレはなにもしない監督だ」

 花散らしの雨が止んだ昼下がり、大選手にして名将としても鳴らした当代きっての野球人と会うため、私は約束していた場所に赴いた。ドアを開け、エントランスに通され、ふと見ると黒ネコの顔が刺繍されたスリッパが置いてある。ずいぶんかわいいスリッパだなあ……取材する部屋で待つこと数分、ぬっと足が入ってきた。さっきの黒ネコと目が合った。顔を上げると球場で見てきた人だった。空気が急に張りつめた。

 椅子に座り、落合博満と向きあい、来意を伝える。中日の監督として阪神岡田彰布監督や巨人原辰徳監督としのぎを削った3強時代における勝負の緊迫感について、予告先発制でなかった頃の駆け引きについて訊きたい……落合は表情ひとつ変えず、沈黙がつづく。そして重い口を開いた。

「相手は関係ないよ」

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 落合はこうも言った。

「オレはなにもしない監督だ」

 得体の知れなさは、あの頃となにも変わっていなかった。

「奇襲だというけれどコイツしかいない」

 大一番を目前にして、巨人ベンチが急に慌ただしくなった。試合開始まで40分を切り新たに相手先発投手のデータを取り寄せてナインを集める。もうすぐ決戦がはじまるというのに、東京ドームは蜂の巣をつついたような騒々しさである。

 2007年10月18日。

 落合監督が率いる中日はシーズンを2位で終えるとクライマックスシリーズ(CS)の第1ステージを、岡田阪神に2連勝して勝ち上がり、リーグ優勝を果たした原巨人に第2ステージで挑もうとしていた。

 第1戦開始前の午後5時20分、グラウンドに現れた落合は原とメンバー表を交換した。原が過ちに気づいたのはその時である。一塁ベンチに戻ると顔をこわばらせてメンバー表を指さす。相手先発は有力とされた山井大介ではなく、小笠原孝だったのだ。

 右ではなく左――。

 不意打ちに遭った巨人の陣営が一気に緊迫した。打撃コーチの篠塚和典は報道陣に「めちゃくちゃだよ。小笠原だからといって(対策を)ハイやめたというわけにいかない」と言い残し、ベンチ裏に消えていく。

 セ・リーグ王者らしからぬ動揺ぶりである。無理はない。試合前までは、この年の対戦で3敗を喫していた山井、あるいはシーズン12勝を挙げた朝倉健太といった右腕の先発を予想し、スタメン野手8人のうち、左打者を6人並べていた。しかも公式戦を終えてからCSまでの14日間、主力には右投手を中心に打ちこませていた。

 まさに奇襲であった。

【次ページ】 巨人祝賀会の裏での落合の決断

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