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「オレはなにもしない監督だ」落合博満がいま明かす巨人との頂上決戦“奇襲”舞台ウラ「相手は関係ないよ」「奇襲だというけれど…コイツしかいない」
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酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byJIJI PRESS / Takuya Sugiyama
posted2026/05/19 06:02
就任3年目となる'06年に2度目の優勝をした中日・落合博満監督。胴上げ後は目を潤ませながらファンの声援に応えた
試合直前のミーティングなど、気休めにもならない。1番高橋由伸の35本塁打を筆頭に年間30本塁打以上の強打者を4人揃える強力打線は振るわず、なにより清水隆行や脇谷亮太を先発に置いたことで、勝負どころで起用する左打ちの代打が手薄になってしまった。小笠原からは5回で1点奪うのが精いっぱい。落合の術中にハマり、原巨人は痛恨の敗戦を喫した。
その戸惑いの大きさは試合直後、原が番記者に漏らしたボヤキに表れている。
《中日スポーツ信じたのがいけなかった》
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翌朝のデイリースポーツが報じた見出しである。CS開幕は注目度が高く、先発予想は日々、投手の調整を見てきた記者にとって腕のみせどころである。試合当日の朝刊は中日球団の系列紙だけでなく、スポーツ5紙も含めて全紙が「山井」と打っていた。
あれから19年。落合は穏やかな口調で、あの日のことを明かす。
「奇襲だというけれどウチとすればコイツしかいないよなというところで出しているピッチャー。それだけ予定していた朝倉と山井の状態が悪かったということ」
CS第1ステージの開幕前夜、巨人が盛大な優勝祝賀会を催している頃、落合は思いあぐねていた。阪神との戦いを勝ち抜けば18日から巨人との大勝負が待つ。その初戦を託す先発投手が決まっていないのだ。朝倉も山井も、9月下旬以降の巨人戦登板で失点を重ねるなど調子を落としていた。
巨人祝賀会の裏での落合の決断
落合が「ピッチャーの監督」と信頼するバッテリーチーフコーチの森繁和と相談して小笠原の先発を決めたのは、CS第1ステージ第2戦を阪神と戦った14日だった。4点リードの6回から小笠原が登板。2イニングを無失点に抑えていた。その投げっぷりから決断したのだと落合は明かす。
「小笠原は、これだったら先発いけるなということで、本当はもう1イニングを投げさせる予定だったのを引っこめたんだ」
小笠原は7月中旬以降、先発10戦で白星から見放されていたが、8月11日の巨人戦で9回を10奪三振1失点に抑えたという好材料がある。向こう気が強く、重圧に屈しないタイプでもある。落合は極秘裏にシーズン6勝の小笠原に白羽の矢を立てた。
先入観も巨人の落とし穴になった。
阪神戦で小笠原が投げた32球は多くはない。とはいえ、直近の試合でリリーフ登板した投手を4日後の巨人との第1戦に先発させるのは“常識”からは考えにくい。そうして先発候補から小笠原を外し、泥沼に足を突っ込んでしまった。
落合は打つべき手を打ち、巨人戦に臨んだ。「その3連戦に限り、岩瀬(仁紀)には『回またぎするからな』と言った」。不動の守護神は阪神とのCS第2戦以降、4試合連続で8回途中から登板して無失点。シーズン中、3度しかなかった回またぎを解禁され、フル回転した。先発、リリーフともに公式戦終盤に無理使いしなかったことが、このポストシーズンに生きた。
この年からセ・リーグに導入されたCSに、落合は並々ならぬ思いを抱いていた。
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