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藤井聡太相手に“タイトルまで1勝から3連敗”直後のYouTubeで…「イジられてますよ」記者が聞いた永瀬拓矢の本音「かなり難しいですよ。フフフ」
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大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph byShintaro Okawa
posted2026/04/12 06:00
王将戦第7局、藤井聡太王将に惜しくも敗れた永瀬拓矢九段。その後に配信されたYouTubeでは旧知の記者の名前を出した
YouTubeが終わるや否や、メールの送信ボタンを押した。緊張しながら待っていると、少しして返事があった。
「いま高槻駅です。帰りの新幹線の中でどうでしょうか」
え、いまから東京に戻るの?
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一瞬だけ躊躇したが、すぐに「向かいます」と返事をし、荷ほどきしたばかりの部屋を大急ぎで片づけた。いわゆる「箱乗り取材」ができれば、2時間は話を聞けるのだ。こんなありがたい機会はない。
ホテルを出たところで、永瀬から「●番線にいます。●時●分発です」とメールが届いた。
やばっ、あと8分で発車じゃないか。走り出して、すぐに息が切れた。うう、0.1トンの体が恨めしい。とにかく走るしかない。
鞄を持った永瀬の姿が遠くに見えた。こちらの姿を確認すると、笑顔で迎えてくれた。喘ぐ姿を見せるのは恥ずかしいが、構っていられない。息が整ってからやっとお礼を告げると、京都駅行きの電車に乗り込んだ。
永瀬から感じる“視線の先にいつも他者の姿”
在来線の混んだ車内ではYouTube出演の話に終始した。ここで王将戦の話は聞けない。出演中に笑顔が多く見られたので、「YouTube楽しかったですか?」と尋ねると、少し難しそうな顔をした。
「スポーツニッポン社さんは、いまでは主催ではなく特別協力になっています。ただ長年に渡りスポンサーとしてお世話になってきたので、その関係は大事にしたい。個人的には、需要があれば出演したいと思っています。今回は無料の配信でしたけど、メンバーシップのような形がよかったなと思いました。そうすれば、少しでも還元されるでしょうから」
自分の状況より、相手への配慮を重んじて出演していたのだ。永瀬には、こういうことがよくある。視線の先に、いつも他者の姿があるのだ。
京都駅に到着し、新幹線に乗り換える。永瀬が小腹がすいたというので、弁当を購入した。選んだのは『ひっぱりだこ飯』。「タコ、好きなんですよ」と永瀬は顔をほころばせた。
藤井さんも後手に課題を…シリーズ通じて言っていましたが
車内で弁当を平らげ、一息ついてから取材を切り出した。永瀬は「あ、はい」と言って、少し緊張した表情に変わった。
まず最初に尋ねたのは先後のことである。最終の第7局は振り駒が行われ、4枚の歩が表を向いて藤井が先手番を得た。永瀬はどちらが欲しかったのだろうか。

