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「もやし」と呼ばれた鹿島沙希の“特異なプロレス人生”…32歳で引退決断「1カ月ニートしたい」「朱里さんのヒモになります」迫る“キモオタ”との別れ
posted2026/04/10 17:00
4月26日に横浜アリーナで引退する鹿島沙希。試合はせず、盛大な引退セレモニーを行う
text by

原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
スターダムの鹿島沙希(32歳)が4月26日、横浜アリーナ大会で引退する。引退試合はしない。引退セレモニーだけが行われる。
「体力の限界。もう32なので。試合は楽しいけれど疲れちゃう」
それが理由で、その先は何も決まっていない。5月5日に33歳の誕生日を迎える前の引退だ。
「もやし」と呼ばれた異色のプロレスラー
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今の鹿島は完全に省エネそのものだ。残された2試合を無事に終えることに徹する。4月23日の後楽園ホールが最後の試合になる。
「自分は最後の後楽園でもう悔いがない。それで、横アリはセレモニーだけでいいですって」
「もやし」と呼ばれた、いかにもひ弱そうな存在はプロレスラーとして特異だった。2013年3月に体調不良の発表で欠場をして、2014年にそれを理由にスターダムを退団し、レスラー活動を休止して出身地の島根に帰っていた。
5年という長いブランクを経て鹿島がスターダムに戻ってきたのは2018年だった。
「25歳近くになってプロレスに復帰して、そのときは『30歳になったらやめよう。それか、3年間きっちりやったらやめよう』と思っていました。でも1年経った頃には、できるところまでやろうと。未来のことも何も決めずに、とにかくできるところまでやりたいです」
そう言っていた鹿島だったが、ついにその時が来てしまった。
電光石火のルチャリブレ式の丸め込みが鹿島の武器だった。起死回生のフレーズ通りにアッという間に逆転のフォールを奪った。番狂わせ的な勝ち星を掴むその姿勢は、体ではプロレスラーらしくなれない鹿島が考えた末にたどり着いた戦い方だ。
「プロレスって一般的にパワーが大事だと思われていますけど、細い体型を活かした技で大きな相手に絡みつくのは自分の持ち味」
いつもがそうかと言えば、違う面も見せた。
2020年3月、コロナ禍の後楽園ホールで、ランバージャックスタイルで行われた岩谷麻優との無観客試合では凄みさえ見せた。プロレスを始めたのは岩谷と数カ月しか変わらない。
「昔、一緒にやっていて、戻ってきて、また一緒になって、私がSTARSを裏切って。いい意味で『この人だったら何やっても大丈夫だ』っていうのが無意識の中にあるんでしょうね」と以前のインタビューで鹿島は語っている。
何が一番うれしかったかという問いに、鹿島は「朱里さんの金魚のフンになっていた時が、現役全部ひっくるめてうれしかった」と即座に答えた。朱里とは真逆にも見える現在の姿勢を、朱里も容認している。
「朱里さんと戦いたくないからGod's Eye(ゴッズアイ)に入った」という、鹿島らしい理由はうなずくしかない。



