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「正直、インサイドを使いすぎた」元WBC投手コーチが疑問視した若月のリード…「ドジャースの山本由伸とは配球が違った」侍ジャパン敗戦の見落とされた盲点
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遠藤修哉Naoya Endo
photograph bySankei Shimbun
posted2026/03/27 17:07
ベネズエラ戦、若月健矢と言葉を交わす山本由伸
武田氏の指摘通り、この試合で日本が浴びた2本のホームランは、いずれもインサイドを狙って甘く入ったボールを完璧に捉えられたものだった。
「インサイドを投げるのは、投手にとっても非常に難しい技術。少しでも甘く入れば、長打のリスクが一気に高まる。隅田(知一郎)が打たれたホームランもそう。インコースにしっかり投げ切れていれば抑えられたかもしれないボールが、わずかに甘く、高く入ってしまった」
さらに武田氏は、オリックス時代とメジャーでは、山本由伸という投手そのものが進化している点を考慮すべきだったと語る。
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「オリックスでずっと組んでいたから、という理由で若月を起用したんだろうけど、メジャーに行った由伸は、もうオリックス時代の彼とは違うピッチャーだ。配球の考え方も、ボールの質も、この2年間で大きく変わっている。そのアップデートに、若月が対応しきれていなかったのかもしれない。彼の頭の中には、まだオリックス時代の“成功体験”が強く残っていたのではないか」
なぜ「落ちるボール」は通用しなかったのか?
この試合のリードをめぐる論点としては、日本の投手陣が生命線とするフォークやスプリットといった“落ちるボール”。ベネズエラの打者は、ほとんど手を出さなかったのだ。
「あれは、ボールが良いところに落ちていなかったという面もあるけど、それ以上に、相手ベンチが『低めは捨てろ』という指示を徹底していたのも大きい。試合後ベネズエラの3番打者アラエスがインタビューに答えていて、低めの落ちるボールを見逃し、高めに浮いたストレートや変化球を狙い撃つ、という戦略だったことを明かしている」
低めは見逃され、ファールで粘られ、球数を投げさせられる。そして、内角を突いた一球を痛打される。まさにベネズエラ打線の思う壺だった。
「試合の途中でリードを修正することは、もちろん可能。でも、そのためには打者の反応や相手ベンチの雰囲気から、戦略の変化を敏感に察知しなければならない。若月は、その変化に気づいてリードをアジャストさせることができたか。そして、投手のほうも、落ちるボールではないボールを主体にするリードに応えることができたか。結果論になるが、そこには疑問符がつくよね」
今回の敗戦は、誰か一人の責任ではない。しかし、エースの力を最大限に引き出すための戦略とコミュニケーションが、この大一番でわずかに噛み合わなかった。それもまた、紛れもない敗因の一つ。この苦い経験は、日本のバッテリーにとって、次なる戦いへの大きな教訓となるはずだ。

