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「藤井さん、自信がないと。私もそう思うんです」永瀬拓矢が語る“vs藤井聡太の難度”…逆転負け扱いも「仕方ないとは。伊藤(匠)さんが現場にいれば」
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大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph byShintaro Okawa
posted2026/03/18 06:02
王将戦第5局、永瀬拓矢があらためて感じた藤井将棋の奥深さとは
68手目に藤井が8七に歩を成った局面で永瀬は長考に入ったのだが、それまでと違って明らかに苦しそうな様子が見受けられた。頻繁に天井を見上げ、ため息をつき、眉間にしわを寄せる。なかなか相手を倒せないことへの焦りや、いら立ちがあったのではないかと外からは見えたのだが。
「勝ち筋があるのかなと思っていたんです。藤井さんも同様の感想でしたけど、感想戦で調べた感じだとこちらがキツかったですね」
はっきり負けを悟ったのはどこだったのだろうか
その後、永瀬は後手玉を追い込んだが、7八の金を取ってから4二の地点に飛車を受けた手が好手という評判だった。▲6二竜の詰めろを受けながら、2二の銀取りにもなっている。この藤井がノータイムで放った自陣飛車で勝負が決まったという声もあったが、永瀬はどう感じていたのか。
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「4二に飛車を打つ手は認識はしてたんですけど、負けかどうかはよくわかりませんでした。一つの変化としては自然なのかなと感じていたのですが、読んでみるときつい気がしました。先手手玉が簡単に寄ってしまうのが誤算でしたね。2二の銀を取られる変化もつきまといますし。もうちょっと難しいのかなと思ったんですけど、読んでみるとジリ貧になる変化が多かったので」
永瀬がはっきり負けを悟ったのはどこだったのだろうか。
「4二に飛車を打たれて、負けかどうかはわからなかったと言いましたよね。でもダメだとも思っていたんです。倒し切れませんでしたから」
永瀬が本局でずっと意識していたテーマだ。
「こういう将棋って倒し切れないと局面の難易度が一気に下がっちゃうので、全然ダメになってしまうんです。藤井さんはそのあと時間を使ってないし、相手にとって難しい変化がなくなってしまいました」
伊藤さんが現場にいれば、また違うのかも
一局の流れについて、永瀬からの感想は理解できた。AIの評価値からすると、この将棋は永瀬の逆転負けということになる。形勢よりも倒し切れるかどうかと認識していた永瀬にとって「逆転負け」という感覚はあるのか。
すると永瀬は少し黙ってから話を始めた。
「まあ、そう見られるのも仕方がないとは思います。伊藤さんが現場にいれば、また違うのかもしれないですけどね」〈つづく〉

