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名作「龍一君の顔色をうかがって…」苛立つ木原龍一、じつは起きていた“りくりゅう最大の危機”…「ようやく巡り合えたパートナー」2人が取り戻した感情
text by

松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2026/03/08 11:00
木原が「スケートの楽しさ」を取り戻した、2025年の世界選手権
2シーズンぶりのグランプリファイナルで表彰台に上がったことを尋ねられると、こう答えた。
「表彰台に戻れたことはやっぱり素晴らしく思いますし、うれしく思います。けど、内容的には、はっきり言って話にならないレベルだったので、そこはやっぱりもっと修正していかないといけないかなと思います」
「話にならない」。言葉だけでなく、表情もまた、硬かった。それを聞く三浦も、どこか張りつめた面持ちになった。
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その後の全日本選手権で優勝。ただ、得点を待つキスアンドクライでの表情もまた、明るさはなかった。
「向上心が逆に自分を苦しめてしまって…」
だが、四大陸選手権を経て迎えた世界選手権で一変する。
ショートプログラムを1位で終えたあとの言葉が印象的だ。
「(2月の)四大陸選手権から、『楽しむ』ことをテーマにやってきました。今回も練習からすべて楽しむことを続けてきた結果が、今日のよい結果につながっていると思います。明日(のフリー)も、もちろん少しでも上に行きたい気持ちはありますけれど、少しでも楽しむ、1ミリでも楽しむ思いを、お客様にも僕たちが楽しんでいる姿を届けたいって思います」
そしてフリーを終えて、2年ぶり2度目の世界選手権優勝を果たしたあと、木原は語った。
「最初はトップの選手たちと滑れることがすごくうれしかったんですけど、試合を重ねるたびに、『少しでも上に行きたい』っていう向上心が逆に自分を苦しめてしまっていて。最初の頃の気持ちを思い出して、4年前の世界選手権で初めてフリーを滑れたときの気持ちはどんなだったかな? って思いながら臨んでいました」
「僕個人の問題だったんですけど、去年、怪我もあって、どうしても悔しい気持ちの方を引きずっていたというか、そういうような感じだったと思います」
怪我で空白が生じた分、巻き返してより高みを目指そうという気持ちが強くなっていた。木原の真面目さや誠実さの表れであったが、それが苛立ちにもつながっていたのだという。

