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「稽古場では一番強い」「すでに三役クラス」“史上最強の新弟子”旭富士23歳とは何者か? “横綱の四股名”を異例の襲名…「4年半待った怪物」の正体
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荒井太郎Taro Arai
photograph byJIJI PRESS
posted2026/03/07 11:05
4年半の“研修期間”を経て初場所でデビューを果たした旭富士。7戦全勝で序ノ口優勝を飾り、番付は西序二段8枚目までジャンプアップした
役力士を圧倒した“伝説”も…異例の「旭富士」襲名
筆者の3年前の取材ノートにはのちの2代目旭富士ことオチルサイハンが、その日の稽古で57番を取って30勝27敗とある。当時、新入幕から十両に陥落していた熱海富士とは13勝9敗。三段目時代の尊富士とは3勝1敗。さすがに幕内の翠富士や錦富士には分が悪かったが、その後はメキメキと力をつけていき、昨年は出稽古に来た役力士をぐうの音も出ないほどに圧倒したという“伝説”もある。すでに三役クラスと言われるほどの実力は、長い“研修期間”に培われたのだった。
それほどの強さを見込んで優勝4回を誇る第63代横綱の先代師匠(現宮城野親方)は、自らの現役時代の四股名「旭富士」を譲ることにした。のちの大関小錦も明治時代の横綱である「小錦」を初土俵から名乗ったが、もともとは高砂部屋伝統の四股名でそれまでにも複数の「小錦」がいた。それを除けば、入門時から横綱の四股名を名乗ることは異例中の異例だが、母校の新名学園旭丘高に因んだ名でもある。
ベールに包まれていた体躯と実力ぶりが昨年九州場所の前相撲で、ついに日の目を見ることになった。身長185センチ、体重150キロの巨漢だが、引き締まった肉体は十分な鍛錬がうかがえる。「懸垂もガンガンできるし、筋トレはめちゃめちゃ好きですね」と日ごろから指導にあたる前出の間垣親方も語る。
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初戦の相手は同じモンゴル出身で高校から日本へ相撲留学し、明徳義塾高から東洋大と進み、大学を中退して角界入りした天昇山。アマ相撲界では全国トップクラスの力量を誇り、自身の体格を上回る197センチ、173キロの猛者だったが、旭富士は低く当たると頭をつけた体勢で両廻しを引きつけながら寄り切る圧勝。その後も危なげない相撲で前相撲を3戦3勝とすると、初めて番付に四股名が乗った翌初場所でも最初の相撲で天昇山と顔が合った。
左四つがっぷりの強烈な引きつけ合いは見ごたえ十分。次第に体勢を低くした旭富士が切れ味鋭い右からの上手出し投げで仕留めたが、序ノ口の取組とは思えないハイレベルな攻防に、まだ観客がまばらな館内で大きな拍手が沸き起こった。


