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《京大・阪大に合格者も》偏差値67“奈良の公立進学校”野球部が県ベスト4で「21世紀枠候補」選出のナゼ…部員の「甲子園が目標じゃなくても…」の真意は?
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田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2026/01/28 11:00
昨秋の奈良県大会でベスト4に食い込み、センバツ21世紀枠候補に選出された郡山高校。公立の進学校という環境下でいかにして強さを保っているのか
そんな卒業生たちの実績に、岡野は「諦めずにコツコツと一生懸命にできるような子が、うちに集まっているんやろうな、と思います」と、目じりを下げながら言う。
「奈良県の公立校では、奈良高校、畝傍高校、郡山高校って“お勉強ができる御三家”のように言われることが多いんです。でも、奈良、畝傍と比べたら、うちは圧倒的に天才、秀才は少ないのかな、と。その分、努力できる子が多く来てくれるのかな? とは思います」
監督が評価する「コツコツ型」のチームを象徴する出来事がある。
部員から「甲子園だけが目標じゃなくていい」の真意
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昨秋、奈良大会準決勝で智辯学園に0-9の7回コールドで敗北した。さらに、センバツへ望みを繋ぐ近畿大会出場を懸けた3位決定戦でも、橿原学院に4-6と競り負けた。
敗戦の翌日となる10月6日。「ホンマに悔しいんかな? 甲子園に行きたくないんかな?」と訝しく思ったキャプテンの田副は、監督に選手ミーティングを願い出た。岡野からすれば、いつも通り要点を話し合って終わるものとばかり思っていたそれは、これまでにないほど長時間に及んだという。
キャプテンが当然のように「甲子園」を標榜する。だが、選手の言葉に耳を傾けていくと、それがチームの総意ではないと気付く。
「俺は甲子園だけが目標じゃなくていい」
ひとりが自らの意見を述べる。すると、多方から「はぁ!?」と疑問が投げかけられる。
「なんでなん? 高校野球やってたら、甲子園に出たいと思わへんの?」
半ば詰め寄るように問いただすと、その選手が「出たくないわけじゃない。俺は一生懸命、高校野球をしたいだけやねん」と言い、本音をさらけ出す。
スタンドで応援していた1年生の夏。フィールドで1球に情熱を注ぐ3年生がかっこよく、眩しかった。「お前らすごいよ。感動したよ!」。涙ながらに声を嗄らす3年生の一般生徒の姿に、その彼は自分なりに高校野球の本質を見出したのである。だからこそ、彼は訴えた。俺が目指すのは、自分たちの代もみんなから応援されるチームになりたい。そのために全力で練習したい――と。
想いがチームに伝わる。ただ、どうしても「それなら、甲子園が目標じゃアカンの?」と、到達地点の確認にこだわる選手もいる。

