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「大丈夫と思わせてエグいパンチを…」堤聖也が語った43歳ドネアの“恐ろしさ”「中盤に鼻は折れていた」なぜ挽回できたのか? 激しすぎた防衛戦ウラ側
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渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2025/12/18 17:30
鼻を折られながらノニト・ドネアに攻勢をかける堤聖也。レジェンドとの激闘にスプリット判定で勝利し、WBA世界バンタム級王座を防衛した
薄氷の防衛「価値が上がったかというと…」
堤はドネアの必殺カウンターを最後まで警戒しながら、何回かドネアをロープに押し込みコンビネーションを見舞った。ドネア陣営は試合後、「有効打はこちらのほうが多かった」と採点に不満顔だったが、ともに決定打が出ない中で、堤がしっかり「山場」を作ったことがポイントにつながった。最終スコアは115-113、117-111で堤、116-112でドネア。10回からの3ラウンドを堤がすべて取ったことで勝利を手繰り寄せた。
古豪と見られたドネアの奮闘に苦しめられ、堤はまたしても薄氷を踏む思いでベルトを守った。毎度の激戦には本人も苦笑いだ。
「苦手なボクサーに何とか競り勝ったのは自信になるとは思いますけど、世界チャンピオンとしての価値がこの試合で上がったかというと分からない。相変わらず面白い試合はするけど『やっぱ堤、すげえ強いよ』と思われるかというと疑問符がつく。もっともっと修正するところ、強くなれる部分はたくさんあるかなと思います」
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次戦は休養王者アントニオ・バルガス(米)との防衛戦が有力とされ、その先にはWBC王者、井上拓真(大橋)をはじめとする他団体王者との統一戦を目標に掲げる。また、スーパーフライ級からクラスを上げ、大みそかにWBAバンタム級挑戦者決定戦に挑む元4階級制覇王者、井岡一翔(志成)との対戦にも並々ならぬ意欲を見せる。
前回はドロー防衛で、今回も2-1判定とギリギリの勝利だった。泥臭くベルトを守った自称「極上のバッタモン」はまだまだハングリーなチャンピオンだ。さらなる栄光を手にするために負けられない戦いが続く。

