「大丈夫と思わせてエグいパンチを…」堤聖也が語った43歳ドネアの“恐ろしさ”「中盤に鼻は折れていた」なぜ挽回できたのか？ 激しすぎた防衛戦ウラ側 

「大丈夫と思わせてエグいパンチを…」

　試合が大きく動いたのは4回だ。堤が距離を詰めたことでパンチの交換が熱を帯び始める。ドネアが右クロス、左フックを打ち込めば、堤も持ち前の馬力を生かしてドネアにロープを背負わせる。ラウンド終了間際、ドネアが右フック、そして右アッパーにつなぐと、これを食らった堤の体がグニャリと曲がった。ダウン寸前のピンチだ。ここはゴングに救われる形となったが、堤はドネアの経験値の高さを痛いほど感じ取った。

4回終了間際、ドネアの右アッパーが炸裂した瞬間　©Takuya Sugiyama

「ドネアは最初に強いパンチを見せてこないで、こちらに『受けても大丈夫』と思わせてからエグいパンチを打ってくる。想定していたパターンの一つだったんです。『1、2回で反応できるし見える。この感じでつぶしていけばいける』と思ったタイミングでした。4回は攻め急いじゃったかな。手札を出すのが早かったかな」

　ここは判断ミスだったが、ミスを挽回するタフネスと粘りこそは堤の身上だ。堤は懸命に足を動かして5回をしのぎ、6回に反撃を開始する。7、8回にはドネアにロープを背負わせて連打を見舞った。この時点で鼻骨を骨折していたというがお構いなしだ。ドネアの顔面も腫れが目立ち始めた。8回は堤が初めて3ジャッジから支持を得た。

ドネアをロープ際に追い込み、右を打ち込む堤聖也　©Hiroaki Finito Yamaguchi

堤聖也が明かした「いかせてもらえない」理由

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　チャンピオンはここから一気に手数を増やして引き離したいところだったが、レジェンドは堤お得意の「サイクロン」をさせてくれない。下がってロープを背負ったときでも、いやそういうときだからこそ、渾身の左フックをカウンターで振り抜いてきたのだ。

「向こうが休んでいるとき、たぶんみんなが『いけよ』と思った時間があったと思うんですけど、そこでやっぱりいかせてもらえない。そういうベテランのうまさというか、経験の差はどこかで感じると思っていたので、そこを感じたのがああいう時間でした」

　試合が終盤に入っても、堤が距離を詰めようとプレッシャーをかけ、ドネアがカウンターを狙うという構図が続いた。43歳のドネアはスタミナに難ありと予想されたが、思うようにペースダウンしてくれない。それでも堤は石原雄太トレーナーの指示を忠実に守りながら試合を進めた。

「いままでみたいに行き切るスタイルだとカウンターがある。まとめるところをうまくまとめてラウンド中に山場を2、3個作ろうと指示を出していました」（石原トレーナー）

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