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遠藤記者、危機一髪!…コースサイドで遭遇したMotoGPマシンの激しい転倒と、近年大事故が増えた理由
text by

遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2025/09/12 11:06
転倒し、舞い上がった末、金網にぶつかって静止したバスティアニーニのマシン
最近のMotoGPマシンは転倒するとグラベルで激しく回転することが多い。マシンにエアロパーツがつくようになり、その性能がコーナーリングスピードの上昇に寄与することになってから、こうしたシーンが多くなったような気がする。実際、スピードに劣るMoto3クラスやMoto2クラスでは、MotoGPクラスほどの激しい転倒はそう多くない。
激しい転倒シーンには2つのパターンがあり、ひとつはアスファルトから砂利になった部分で、マシンが何かにひっかかる形で跳ね上がるケース。ハンガリーGPとカタルーニャGPでの転倒事故でも、マシンがコースを外れてグラベルに差しかかるところで大きく跳ね上がった。そして、近年増えているのが4輪レースと併用されているサーキットでグラベルが一段と広く取られ、その広くなった部分にアスファルトが敷かれているというケース。転倒したマシンの路面を滑走するスピードが異常に速くなるため、最終的にマシンが止まったときのダメージが大きくなる。
カタルーニャGPでは、筆者の目の前で転倒したエネア・バスティアニーニが決勝レースで3位表彰台に立っている。今年ドゥカティからKTMに乗り換え苦戦してきたバスティアニーニだが、このところの好調の要因はエアロパーツで「とても乗りやすくなった」と語る。
スピードに歯止めはかかるか
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そんなこともあり、国際モーターサイクリズム連盟(FIM)、グランプリを運営統括するドルナ・スポーツ、参加するメーカー、チームなどで形成されるグランプリコミッションは、今や350kmに到達する速度とラップタイムの急激な上昇に歯止めをかけるため、マシンの排気量を現在の1000ccを850ccに引き下げ、エアロパーツの最大横幅を50mm減らして空力効果を落とすよう制限、そして燃料タンク容量も減らすなど、全体的にスピードを抑えるルール改正を2027年から実施することを昨年発表している。
最高速度が何km出た、ラップタイムが何秒向上した、といったデータ面から「速さ」を知ることもできるが、カタルーニャで遭遇した転倒でぼくは身をもって「速さ」を実感した。「200kmのスピードでグラベルの砂利が飛んで来たよ」と仕事仲間を笑わせたが、その砂利で600mmのレンズにヒビが入った。高価な機材ではあるが、壊れたのがレンズで良かったと思う事故だった。

