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ノムさんが「そんなに走って、技術練習できるのか？」広澤克実が出会った“3人の名将”「《知将》野村克也監督の神髄は“データのウラの心理”」
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph byNaoya Sanuki(L)/Koji Asakura(R)
posted2025/07/16 17:02
陸上部よりも走らされ、走って野球がうまくなるならマラソン選手がホームラン王だろ！ と悪態をついていた広澤たちに野村監督がかけた声とは……
「僕が入団したときのヤクルトは本当に弱かった。いつも大洋（ホエールズ・現横浜DeNAベイスターズ）と最下位争いをしていました。あの頃は、いくつか負けパターンがありました。自分たちが勝っているときには、“いつか逆転されるんじゃないか”と思っている間に逆転される。先取点を取られれば、“あぁ、今日も負けるんだなぁ”と思っているうちにそのまま負ける（苦笑）。その繰り返しでした」
1980年代のスワローズは低迷が続いた。80年こそ、2位となったものの、それ以降は常にBクラスにあえいでいた。広澤が入団したのは、まさにそんな頃のことだった。
「でも、野村さんが監督になって何年かすると、そんな意識はなくなっていました。特に、日本一になった93年は、セ・リーグでは負ける気がしませんでした」
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野村が就任してチームのムードが変わった。選手の意識が変わった。一体、何が変わったのか？
「データの背後にあるもの、そこにいたる心理」を大切に
「野村さんが掲げたID野球というのはデータを重視する野球です。もちろん、現在の選手たちもデータを重視してプレーしています。でも、野村さんの場合は単に数字だけを見て判断するのではなく、その背後にあるもの、そこにいたる心理を探る野球だったのです」
野村が提唱した「ID野球」の神髄とは、「データの背後にあるもの、その選択をするにいたる心理」を重視することだという。広澤の解説は続く。
「例えば、2ボール1ストライクのバッター有利のカウントでスライダーを多投するピッチャーがいたとします。そんな場面が30回あって、25回がスライダーだった。そうなれば、スコアラーもバッターも、スライダーを意識するようになります。でもね……」
試合序盤でデータ通りの場面が訪れる。打者はスライダーを狙い、それをヒットにした。そしてまた次の回も同じケースで打者はスライダーをヒットした。広澤が続ける。
