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「なんでオレ?」“大工からドラフトどんじり入団”が日本一チームに…「野村再生工場の最高傑作」田畑一也の人生を変えた“まさかのトレード” 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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photograph byNaoya Sanuki

posted2025/07/12 11:00

「なんでオレ?」“大工からドラフトどんじり入団”が日本一チームに…「野村再生工場の最高傑作」田畑一也の人生を変えた“まさかのトレード”<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

草野球で無双していた大工だった田畑。テストからドラフトどんじりで入団し、トレードされて日本一チームの優勝に貢献という波乱万丈の野球人生を語った

故障者続出の先発陣の穴を埋める

 実は田畑を先発の一角に押し上げなければいけないチーム事情もあった。先発ローテーションの柱として前年の日本一に貢献した石井一久、岡林洋一や、3年連続2桁勝利を挙げたこともある川崎憲次郎らが相次いで故障離脱。穴をいかに埋めるか頭を悩ませていた野村監督にとって、見つけ出した“掘り出しもの”が苦労人の右腕だった。田畑は開幕するとすぐに先発ローテーションに入る。3年ぶりの先発登板となった4月13日の中日戦では、9回途中まで投げて移籍後初勝利を挙げた。

「野村監督に出会って一番変わったのは考え方ですね。コントロールええな、なんて褒められても、そんな自覚はなかった。ただ、ストライクゾーンの四隅にしっかり投げる制球力はなくても、色々な球種でストライクを取れる、という部分ではなんとなく自信があったんです。

 そこへ来て、打者にバットを振らせて勝負するという考え方を野村さんから教わった。タイミングを外す、バットの芯を外す……三振を取るのではなく、1球で打ち取る方法が分かり始めたんです。それを理解した段階で受けてくれるキャッチャーは古田(敦也)さんでしょ。サイン通りに投げておけば面白いように打ち取れたんです」

「日本海側の生まれは辛抱強いんや」

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 野村監督は、富山県高岡市出身の右腕によく「田畑は俺と同じ日本海側の生まれだから辛抱強いんや」と声をかけていたという。自身もテスト生から南海に入団した野村監督にとって、同じ経緯を辿ってプロ野球の門をくぐった右腕には思い入れもあったのだろう。

 こんな出来事もあった。初勝利を挙げた後、先発で3連敗してしばらくリリーフに回るなど、足踏みが続いていた。そんな田畑に、野村監督が声をかけた。

【次ページ】 まさかのサイドスロー指令

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