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巨人・田中瑛斗は同期の日本ハム清宮斬りを宣言…20回目の節目を迎える「日本生命セ・パ交流戦」今年のニュースター候補も大胆予想
text by

広尾晃Kou Hiroo
photograph byYuki Suenaga
posted2025/06/09 17:00
現役ドラフトで日本ハムから巨人に移籍した田中瑛斗
移籍経験者の内川が果たした役割
交流戦と言うとどうしてもセ・パ、チームの勝敗に目が行きがちだが、実は、選手にとっては、異なる対戦相手、異なる球場での試合で目立つ活躍をして、交流戦明けにはレギュラーの座をしっかり固めたい、という「野心渦巻く舞台」でもあるのだ。特に「移籍」を経験した選手にとっては新チームで認められたいという思いはひとしおだ。
この日の記者会見のゲストは、右打者最高打率.378をマークした内川聖一氏。横浜からソフトバンクに移籍した2011年、交流戦でMVPを獲得している。セからパに移籍した直後とあって、ソフトバンクの選手にセの投手、打者の特長についてレクチャーしたと語った。
昨年、交流戦史上最高打率.438をマークしてMVPに輝いた日本ハムの水谷瞬は、ソフトバンクの育成選手時代から、抜群の身体能力は評価されていたが、出場機会に恵まれなかった。23年オフの現役ドラフトで日本ハムに移籍して初めて一軍に昇格。交流戦の初戦である阪神戦で3安打すると、ここから15試合連続安打。終盤には不動の中軸打者になっていた。
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こういう「出世物語」も交流戦の魅力だ。
「便利屋」からの脱却へ
記者会見に出席した4選手の他に、交流戦で期待する「スター未満」の選手を挙げてみよう。
まずは、オリックスの廣岡大志。奈良、智辯学園では1学年上に巨人の岡本和真、1年下には阪神、村上頌樹。16年にドラフト2位でヤクルトに入団。コンタクト率が高い打撃力と、どこでも守れるユーティリティ性で期待されたが21年に巨人にトレードされる。ここでも期待されたが、打撃でも守備でも「帯に短し、襷に長し」という感ありだった。一度は打席に向かいながら原辰徳監督に呼び戻されて代打を送られるなど、残念なシーンもあった。
さらに23年シーズン中に地元大阪のオリックスに移籍。昨年まではオリックスでも「便利屋」の印象が強かったが、岸田護新監督になった今年、4月22日のソフトバンク戦で「1番中堅」に抜擢されて2安打、ここから出場機会が増え、5月13日からは「1番三塁」に定着して打率.319、4本塁打をマークしている。
廣岡と言えば「チョンボ」。どこでも守れるが、ミスも多い。6月1日の西武戦では初回、安打で出塁しながら牽制でアウト。3回には三塁タイムリーエラーで先制点を与えたが、直後に回ってきた打席で逆転2ランホームラン。
「廣岡はやらかすけど、自分で取り戻すのがおもろい」とファンに大うけだった。
10年目の今年の交流戦は「レギュラー未満」「便利屋」のレッテルを返上し、大型リードオフマンとして売り出す最大のチャンスだ。古巣のヤクルト、巨人の選手に、溌剌とした姿を見せることができるか。

