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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「えっ、井上尚弥が鼻血を…」じつは1ラウンドにあった“カルデナスの異変”「思っていたのと違うぞ」世界的カメラマンも動揺…現地で何が起きていた?
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福田直樹Naoki Fukuda
photograph byNaoki Fukuda
posted2025/05/10 11:29

試合前日の計量で顔を合わせた井上尚弥とラモン・カルデナス。この時点でカルデナスの善戦を予想する声は少なかった
「何ラウンドで終わる?」米記者もカルデナスを軽視
一方、挑戦者のカルデナス選手については、過去の試合映像を見たうえで「あまり高く評価していなかった」というのが正直なところです。さらに公開練習、会見、計量と撮影していく過程で、ちょっと覇気が足りていないようにさえ見えました。実際には、闘志を内に秘めるタイプだったわけですが……。
練習でも左フックを小気味よく振り抜いていましたが、そこまでの怖さはなかった。間違いなくいい選手ではあるものの、戦力的には飛び抜けた武器がなく、すべての要素が70~80点くらい。ほぼ全項目が100点に近い井上尚弥よりも優れているところはないな、というのが率直な印象でした。
昔からカルデナスを知っているテキサスのカメラマンと試合前に話す機会がありました。でも彼の勝ち筋が見えないので、「頑張ってくれるといいね」くらいしか言えない。知り合いのアメリカ人記者からは「何ラウンドで終わる?」と聞かれました。素直に「4、5ラウンドくらいだと思う」と答えてしまいましたが、そもそも質問自体が「どっちが勝つ?」とか「カルデナスに勝機はある?」ではない。つまり、誰もが完全なるBサイドの選手だと考えていたわけです。いまにして思えば、その見立ては間違っていましたね。
「あれ、カルデナスは思っていたのと違うぞ」
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1ラウンドの井上選手の動きはよかったと思います。すごく集中していたし、ジャブもスムーズでした。ラウンド終盤にはいいワンツーも出た。「ああ、いつも通りの感じだな」と。これといって不安や違和感はありませんでした。
ただ、対するカルデナス選手もかなり鋭いジャブを打っていた。さすがにスピードでは劣っていましたが、映像や公開練習で見たときよりもずっとシャープな動きでした。しかも、普段はL字ガードなのにこの試合では両腕を高く上げて顔面を守っている。「あれ、カルデナスは思っていたのと違うぞ」と感じました。
2ラウンドはカルデナス選手のジャブと右が何発か当たって、残り1分を切ったあたりで井上選手が鼻血を出した。あまり見たことがない光景です。ボディはあえて打たせていた部分もあると思いますが、ジャブをもらっていたのはすこし気になりました。