「カルデナスは狙っていたわけではない」井上尚弥“まさかのダウンシーン”に元世界王者・飯田覚士の見解「ここ最近のベストラウンドは…」 

　ビッグパンチを狙わず、小さいパンチからコツコツと。まだ不十分だった情報収集もやり終えた。下地をつくっておいて迎えた4ラウンド。ダウンシーンこそないが「ここ最近のなかでの戦いにおいて、僕はベストラウンドだと感じた」と飯田は言い切る。

ダウンからの凄まじい猛チャージ

　的確なジャブ、強烈なワンツー、相手の右フックをかわしての左、右からの4連発、ラウンド終盤のラッシュ……力強く、圧倒していくラウンドになる。

「相手のガードの中を割っていくように攻めていくかと思ったら、今度は右を外から打ったり、距離が詰まったらボディーも叩いたり。上も下も中も外も、空いているところを当てていきました。残り40秒では強振してきたカルデナス選手の左フックに対して左フックを合わせているんですね。ネリからダウンを奪い返したシーンと同じような展開だったのですが、1発で倒れないからといって同じパンチを追撃しているんです。普通、これはできない。できたとしてもどうしても間があくもの。反応スピード、反射神経を一段階上げてきて、完全にゾーンに入っている感じがありました。もうカルデナス選手はだいぶ何もできなくなっていましたね。攻め手が消されて、一方的になりつつあったこのような展開が続けばあと1、2ラウンドでフィニッシュを迎えるのではないかと思いました」

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　ダウンシーンからの凄まじい猛チャージである。カルデナスに傾きかけた流れを急速に引き戻すとともに、心を折るべく一気にネジを巻いて攻め立てた4ラウンドでもあった。カルデナスの左フックは危険な香りが漂うとはいえ、集中を研ぎ澄ませていく井上はその気配すら封じ込めていくようだった。

窮地に立った挑戦者の逆襲

　このままいけばジリ貧になっていくことはほかならぬカルデナス自身が分かっていた。当初、井上のラスベガス上陸においてWBC1位アラン・ピカソが対戦相手の筆頭候補だった。しかしながら最終的に合意に至らず、29歳のカルデナスに世界初挑戦の、それも4団体統一王座挑戦のビッグチケットが舞い込んできたのだ。プロボクサーとしての収入が少なく、ウーバーイーツの配達でアルバイトをしていた時期もあったという苦労人。このままじゃ終わらせない――。今度は窮地に立ったチャレンジャーが動いていく。

＜続く＞

#3に続く

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