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「巴投げを開始早々から…」体重無差別でも2勝、最軽量級の角田夏実が体現した“柔道のロマン”…代表監督が評価した「彼女にしかできない役割」
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2025/04/22 11:01

4月20日に“体重無差別”で行われた全日本女子柔道選手権
2回戦では9度目の出場となる登録体重76kgの橋高朱里と対戦。開始早々から巴投げを仕掛ける。それが実ったのは、残り時間2分20秒。巴投げでついに有効を奪い、勝利した。
続く3回戦であたったのは寺田宇多菜。70kg級でグランドスラム大会優勝など実績を持つ選手だけに、1、2回戦のようにはいかなかった。結果、0-3の旗判定で敗れた。
監督が明かす角田の魅力「彼女にしかできない役割」
ここで大会を終えたものの、十分期待に応えるものだった。体格差にもかかわらず、臆することなく自分のスタイルを貫いた。貫くだけでなく、過去2大会の成績を上回る、2つの勝利にもつなげた。相手に投げられず、一つもポイントを奪われることはなかった。
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女子日本代表の塚田真希監督はこのように評価している。
「『柔よく剛を制す』じゃないですけど、そういう言葉に期待するし、戦略的に組み立てる部分は、マニアにも面白いし、柔道をあまり知らない人にも見て楽しいと思ってもらえると思います。そういう両面を持ち合わせた、彼女にしかできない役割ではないかと思います」
角田の真骨頂…じつは巴投げをアレンジしていた
当の本人は悔しさを示した。
「なんでもう少し頑張れなかったかな、決めきれなかったかなと思います」
「できればもっと上に行きたかったです。負けたことは悔しいです」
体格差はどうあれ、悔しい、と受け止めるところに角田の真骨頂がある。
同時に、今大会は悔しさとは別の感情も呼び起こした。それは柔道が「楽しい」という感覚だった。
「48kg級とはまた違う緊張感があって、オリンピックのときより緊張するかもって思った瞬間もありました。そういった面だったり、柔道を全部楽しめたのかなと思います」
本気で挑んだから、大会に向けて戦い方を考え、巴投げも相手の体重を利用して、持ち上げるより流して投げられるように……と変化を加えた。本気で勝負した。そして感じたのは勝負の世界に身を置く充実感と、「やっぱり私は柔道が好きなんだな」という気持ちだった。