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「ちょっと意外だったね」“敗者引退マッチ”に激しい賛否両論…上谷沙弥が明かす中野たむ戦への本音「最高のプロレスを黙って見とけって」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byHirofumi Kamaya

posted2025/04/13 11:01

「ちょっと意外だったね」“敗者引退マッチ”に激しい賛否両論…上谷沙弥が明かす中野たむ戦への本音「最高のプロレスを黙って見とけって」<Number Web> photograph by Hirofumi Kamaya

4月27日に中野たむとの“敗者引退マッチ”を控える上谷沙弥

ファンと“馴れ合わない”プロレス

 プロレスにかける覚悟。それを示す必要があると上谷は感じた。言うまでもなく、プロレスはスポーツであり格闘技であると同時にエンターテインメントだ。相手の技を受け、パフォーマンス的な要素があり、何より観客に見せることが大前提になる。

 いつ、誰が見ても楽しめるスポーツ・エンターテインメント。そんなプロレスのイメージが広まることには、しかしデメリットもあった。勝っても負けても次の興行がある。選手は試合に出場し続ける。そうなると選手とファンの間に“馴れ合い”が生まれないか。たとえエンタメの要素があっても、試合には勝者と敗者がいる。負けた選手とそのファンは傷ついて当然なのだ。上谷とたむがやろうとしているのはファンと馴れ合わないプロレス、負けたら傷つくプロレスだ。

「自分がやりたいようにやってるだけなんだけどね。見る人がどうかじゃなく、自分がやりたいことをやる。そういう試合もあるってこと。今はSNSもあるから、言いたいことが言えない場合も多い。“こんなこと言ったら叩かれるんじゃないか”とかね。でもプロレスラーなんだから、最後は自分がやりたいことを信じるしかない。私たちは自分たちが思う最高のプロレスをぶつけるから黙って見とけって。まあ言いたいヤツには言わせておけばいいよ。でもみんな、どんな結末になるのか目が離せないだろ? それは私たちの選択が正解だったってこと」

「引退をかけるという究極の形は…」

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 もちろん、相手が誰でもいいわけではない。「引退をかけるという究極の形は、中野たむとだからできること」だと上谷は言う。スターダム発のアイドルグループに参加した上谷をプロレスに誘ったのがたむだ。「以前は師匠と弟子みたいな関係だった」と上谷。たむ曰く「上谷との関係を語り出したら3日はかかる」。上谷が現在保持している“赤いベルト”ワールド王座も、防衛記録を作った“白いベルト”ワンダー王座も、たむから奪ったものだ。師弟からライバル、さらには不倶戴天の敵へ。2人の関係性は闘うたびに濃く、複雑なものになっていった。

「コイツになら何をやってもいいって思ってるし、お互い負けたくないから技も激しくなる。どっちも絶対に引かないから、インタビューでもSNSでも意地の張り合い。“どうせアイツは結婚できない”とか、そんなことでも言い合ったり(苦笑)」

 本当はそれじゃいけないんだけど、と前置きして、上谷は言った。

「お互い“コイツが相手なら死んでもいい”って思えるところまで来ちゃったんだよね」

【次ページ】 「感情がメチャクチャ」な今

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