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「いつ世界戦をやってもいい。強いです」長谷川穂積が絶賛…那須川天心の“並外れた感覚”とは?「なんて反応がいいんだ…」「生で見た僕もあの採点通り」
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渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2025/02/28 17:46

那須川天心は前WBOバンタム級王者のジェーソン・モロニーを判定3-0で撃破。長谷川穂積さんは「いつ世界戦をやってもいい」と太鼓判を押す
那須川天心の「並外れた感覚」とは?
那須川の良かったところは具体的にどこだったのか。まず長谷川さんが指摘したのは「反応の良さ」である。
「今までもすごいと思っていたけど、ちょっと並外れた感覚を持ってますね。たとえばモロニーのジャブを右によけてスッとサイドに回っていた。あれは当たり前のようにやってるけど意外に難しいよけ方なんです。サウスポーの選手が右によけるということは前によけることになります。モロニーの右ストレートを左によける場合、後ろによけることになるからまだよけやすい。右に、つまり前によけるのはリスクが高いんです。それを天心選手はシュッと首をずらして右によけていた。何回かありましたね。あれは相当パンチを見切っていないと難しいんです」
前によける場合、少しタイミングがずれれば、パンチに当たりにいくような形になってしまう。それを難なくこなしてしまう反応の良さに長谷川さんは目を見張った。
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「しかも僕が見ている感じでは、勘でよけていない。ちゃんとジャブがくるのに反応してよけている。スッと顔を先に移動させて、あとから体がついてくるようなイメージです。なんて反応がいいんだと思いました。体の使い方、脚のスピード、反応が全部パーフェクトなんです」
技術的な見どころはほかにもあった。
「モロニーの左フックをスウェーでかわして右フックを打ったシーンがありました。あれもけっこうな高等技術だと思います。空間支配能力が高いし、反応速度、反射神経が抜群にいい。あとは上下の打ち分け。すごく上手に打っていたと思います」
6回にピンチを迎えた後に打ち合ったシーンを那須川本人は「自分じゃないみたいだった」と振り返った。長谷川さんもあの場面を高く評価する。
「効かされた場面があって、その後に打ち返した。あそこで勝負できた。しなくてもよかったところで勝負できた。あれがとんでもなく彼の成長したところだと思います。あれをやる場面ってこれから先いっぱいくるんですよ。額をつけて打ち合う。これは避けては通れない道なんです」
那須川は序盤に脚を使い、6回以降もフットワークでモロニーを翻弄したが、同じ脚を使ってもその意味は大きく違っていたという。